『わたしたちに許された特別な時間の終わり』岡田利規

わたしたちに許された特別な時間の終わり
  • 著:岡田利規
  • 出版社:新潮社
  • 定価:1365円
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★★★★★
今になって私は、今があれから何日経ったのか、今の日付はいつなのか、そんなこと分からなくなってしまいたい、という気持ちでいた自分のことを、冷静に俯瞰できる。そしてあのときは、そういう気持ちでいることが特別に許されていたのだということが、よく分かる。私たちは窓も時計もない、テレビも見ずに済む、子供の夢のような部屋にいたのだ。
〜『三月の5日間』より〜

2003年3月、アメリカがイラクへの攻撃を開始する数日前…一緒に行くはずだった女からドタキャンされ、仕方なく余った映画のチケットを売り捌くべく映画館の前で見知らぬ女(しかもかなり見た目キツい)に声をかけ、はからずも隣同士で見ることになった男。

男は、映画を見終わった後もすぐには帰ろうとせず喋り続けるその女から、二日後に六本木のライブハウスで行われるという少し変わったパフォーマンスのことを聞き知り、男ばかり6人で飲んだ勢いでがやがやと駆けつけ、その場の雰囲気にのまれるかのように、出会った一人の女とこの後の約束をとりつけ、そのまま渋谷のラブホテルに向かうことに。

そして二人がホテルで過ごしている間に外の世界ではアメリカのイラクへの空爆が始まり…岸田戯曲賞を受賞した戯曲を小説に書き改めた(と、どこかで読んだ)『三月の5日間』と、『わたしの場所の複数』が収録された短篇集。

始まったんだねやっぱり戦争。
イラク空爆のとき渋谷のラブホで四泊五日。
「十年に一人の逸材」岸田戯曲賞受賞作家爛船Д襯侫ッチュ畭塰召両説デビュー!』だ、そうで。


二篇併せても151ページという短さなのに、なかなか難解で、読むのに時間がかかってしまった(隙間なく文字に埋め尽くされてるし)。

およそ戯曲というもの(木下順二の「夕鶴」ぐらいしか知らない…)にも、そもそも演劇にも縁がなかったので「ふーん、こういうものなのか…」という感じ(これが舞台でどうなるのか、多少興味は惹かれたけど)。

映画館で出会った女、の思考はなかなか自虐的で面白くて少々ウザくて…でも、いっぱいいっぱいな人って、結構こんな風に自爆してしまうのかもなと思えてしまった。

確かに、時間という概念が麻痺してしまうラブホテルという、二人さえいれば他には何もなくてもいい密室で、外からの情報を一切遮断して、こんな風に過ごせたら…と、羨ましく思わなくもないけど、フリーターの二人だからこその話かな。

歴史とリンクした、非日常な五日間を過ごした後の、帰り道の彼女の描写はすごく印象的かも。

同時収録されてた『わたしの場所の複数』の30歳のフリーター夫婦の妻「わたし」の、どうしようもない倦怠感というか、焦燥感というか、「それなのにあなたは…」みたいな感は、結構良く分かる(一度では理解できなかったので、二回読んでやっと、だけど)。

傍から見れば、心の広い良い夫なのに…女の心理って複雑だなぁと。

でも、中身の面白さは分かったけど、正直読んでてすごく疲れてしまった(活字大好きな私にでも、少しくらい空白がほしかったというか…ハンドルの遊びのようなものがあればなぁと)。
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