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    『しずく』西加奈子

    しずく
    しずく
    西 加奈子 2007/4/25発行 光文社 P.210 ¥1,365
    ★★★★★
    ……嘘をつこうが、自分を作ろうが、それをするのはすべて「自分」なのだ。「ありのままの私」なんて、知らない。今この地面に足をつけている、この足こそが私のものだし、他の何者にだって、変わることは出来ない。変わりたい、と思っている、自分がいるだけだ。
    〜『影』より〜

    仕事先のエレベーターの中で、十数年ぶりに偶然再会した幼馴染から、その日のうちに海外旅行に誘われたフリーライターの「私」。
    軽いノリで、軽いイメージの街「ロサンゼルス」にやってきた二人は、二日目にして、もう時間を持て余し…『ランドセル』

    夫の死後、住み慣れた大きな一軒屋を人に貸すことにして、自身はマンションに住み始めた老婦人の元へ、ある日家の借主である、若い女性が手土産を持ってやって来た。
    小説家だという彼女の、恥ずかしい本のタイトルを聞いた老婦人は、思わず我を失いそうになり…『灰皿』

    恋人を逃がしたくないあまり、離婚後は母親と暮らすバツイチの恋人の娘を一日預かることになった、本当は子供が大嫌いなのに、恋人の手前優しい女性を演じていた34歳の「私」。
    7歳になるという彼の娘は、とんでもなく可愛げがなく、憎たらしくて…『木蓮』

    誰からも「強い女」と思われ、自身もそれを演じていた「私」は、理由あって会社を辞め、「ありのままの自分」でいるために、ひとり、遠く離れた南の島にしばらく滞在することに。
    海にたたずむ「私」に最初に話しかけてきたのは、島の子供たちから嘘つき呼ばわりされる、一人の女の子…『影』

    飼い主である男女が恋をして、一緒に暮らすことになり、新居に連れてこられた、男女それぞれの飼い猫たち、メスで六歳と少しの「フクさん」と、同じくメスで七歳になる少し前の「サチさん」。
    そこで自分以外の猫を初めて見たニ匹は、最初こそけん制し合い、喧嘩はしょっちゅうするものの、お互いの存在の心地良さを感じ、仲良く暮らしていたのだが…『しずく』

    これから同棲を始めようとする三十歳の娘のアパートに、引越しの手伝いにやって来た、あまり役には立たない、子供のようにあどけなくて無邪気な「母」。
    引越しを目前にして偶然見てしまった、「彼」と見知らぬ女性との関係を疑い、ブルーになってしまった娘は、この頼りげのない母親に彼のことを相談しようかどうしようかとさんざん悩み…『シャワーキャップ』

    幼なじみ、老婦人と若い小説家、三十女と恋人(バツイチ)の娘、旅行者と嘘つき女、二匹の雌猫、母と娘…の「女どうし」を描いた六つの物語

    『「そうか、あなたがいたんだ。」
    迷っても、つまづいても、泣きそうでも。
    人生って、そう悪くない 
    初めての短編集』だ、そうで。


    西さんの『通天閣』が、ツボに嵌ったので、最新刊を見つけて手に取ると、なんと直筆サイン入りの本で、めちゃくちゃ嬉しかったりした(お店で付けてくれるカバーも、この本用の特別バージョンだったので、これはもう買うしかないし、お宝だなと)。

    でもって、どれもやっぱり「大阪の血」が流れてる話というか、おもろくて、ほろりとくるようなお話。

    なかでもめちゃくちゃに気に入ってるのは、表題作の『しずく』。
    これはもう、猫好きにはたまらないし、もちろんそうでなくても、寓話のようなこの話の奥深さに感動できるのでは、と…。

    二匹の猫さんたちの会話は、まさに家で飼ってるニ匹の(どちらも女王様のような)雌猫さんたちのやりとりそのまんまのようなので、「そうか、この子たちはこんな会話を交わしていたのか…」と、感心することしきり。

    他のも本当にどれも良くて、『灰皿』に出てくる上品な老婦人と、下ネタの取り合わせが絶妙だし、『影』の主人公の元彼との話も、少し切なくて辛くて良くて、『シャワーキャップ』は、もうすぐ来る「母の日」にぴったりな、ものすごく良い話だなと…。

    「…私のために泣き、私を、恐ろしいほどに愛している、母がいる。どれほど頼りなくても、情けなくても、母は、全力で、私の「母」だった。母のことを子供のようだと思っていた私は、誰あろう、その母から生まれてきたのだ。その事実が、どれほど私を慰め、そして勇気づけたか。」という下りを読んで、改めて母親にきちんと感謝したくなってしまったし…。

    『しずく』は、きっとこれから先、何回も何回も読み返したくなると思うくらい、切なくて好きな話だし、これはもう本当に「ええ話」だらけの短編集なので、是非一家に一冊とお薦めしたくなるような…。

    ちなみに、こちらが西さんのサインです(特製のカバーにしても、サインにしても、人柄がにじみ出ているような…)。





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      『通天閣』西加奈子

      通天閣
      通天閣
      西 加奈子 2006年 筑摩書房 P.203
      ★★★★★
      「生きている」というのは、もっと、血の通ったことだと、俺は思う。こんな風に日々、早く時が過ぎればいい、今日が早く終わればいいと思いながら過ごし、そのくせ明日を心待ちにすることもない。こうやって明日も早く終わり、その次の日も早く終わり、その次の次の日も早く終わればいい、そう思いながら生きるのは、生きているのではなく、こなしているのだ。連綿と続く、死ぬまでの時間を、飲み下すようにやり過ごしているだけだ。

      家庭を持つことをあきらめた中年男は、時計の電池を抜き去り、時間を止めたまま、一日一日をただやり過ごし、他人との接触を極力避け、工場での単調な仕事をひたすらこなす毎日。

      生活の中心であり、全てであった同棲相手が、夢を追いかけ一人アメリカに旅立った後、取り残された若い女は、ひとりぼっちの孤独を持て余し、海を渡った男の興味を惹きつけておくために夜の世界に足を踏み入れ、辛い仕事をこなす毎日。

      別々の場所で、同じように、凍えそうなほど冷たい部屋で目覚め、一日が始まり、終わることをただ繰り返す二人。

      そして、かつて一人の人を愛せなかったことを悔いる男が、自分の人生を嘆き「死にたい」と思ったとき、
      父親の顔さえ知らずに育った女が、一つの愛を失い、生きる力を失くし、自棄になりかけたとき、

      二人は同時に「俺以外につまらない人生」、「私とどっちが不幸か」という思いから、今まさに死のうとしている奴の顔を拝みに行こうと「通天閣」の足元へと駆けつけ…。

      「えらいこっちゃ!
      このしょーもない世の中に、
      救いようのない人生に。
      ちょっぴり暖かい灯をともす、
      驚きと感動の物語。」だ、そうで。


      これはほんまに「ええ話」。
      「魂の再生」のきっかけとなる場面がおもろすぎる(舞台が大阪だから、余計に…)。

      中年男の、人を寄せ付けまいとする生き方の奥底にあるものが、切ないというか、胸が苦しくなるほど締め付けられるというか…(しかも、そんなこと言ってる割には、自ら歩み寄ってるのがまた切ない)。

      同棲相手の「マメ」が出て行って、それでも毎日鏡に向かって「別れたわけやない」と一人つぶやく女の姿も痛々しい。

      最初の方は「なんだ、この暗いムードは…」と、読んでいて絶望したくなるほど寂しい話なのかと思ったけど、背景にある大阪の新世界の猥雑さが、落ち込むことを赦さないというか、人情味あふれる大阪弁が悲壮感を和らげているというか、絶妙なおもしろさを醸し出すというか。

      最後に男が叫んだ一言は…あ、憐れすぎて、くくくっ。

      各章の冒頭の「夢」の話もすごく好きだし(見たらうなされそうな夢ばかりだけど)、心に響く台詞が本当にたくさんありすぎて…(私も「死ぬことを待つだけ」の日々をやり過ごしてるなぁと…これではいけないと、つくづく考えさせられた)。

      女の働く「サーディン」の店の名前の由来も「こてこて」で良いけど、店の「ママ」さんのキャラがまた良くて(一緒にいたらイライラしそうだけど)…結構ツボだらけだったかも。

      私も長い(あまりにも長すぎる)充電期間を終えて、そろそろ、「阿呆」のように人を愛そうと、腹の底から力が湧いてきた、ような。
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