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    『とりつくしま』東直子

    とりつくしま
    とりつくしま
    東 直子 2007/5/10発行 筑摩書房 ¥1,470
    ★★★★
     違う。そのくちびるを、手を、受けるのは、あたしなのに。いやだ、こんなの。見たくなかった。こんなの、見なくちゃいけないなんて、地獄だ。とりつくしまなんて、もらうんじゃなかった。
     ねえ、渉。これ以上、この女といちゃつくつもりなら、いっそ、あたしを壊して。たたき割って、粉々にして。
     あたしの必死の想いは、でも、届かなかった。  〜『トリケラトプス』より〜

    死んでしまった人間が、この世にあるなにかの「モノ」にとりつくことができるように取り計らってくれるという、あの世にある「とりつくしま係」。

    声を掛けられた人たちは、失くしてしまった元の身体の代わりに、それぞれにこの世で思いを残した人たちの身近な「モノ」へと形を変えて、この世を再び体験することができるというのだが……。

    病に倒れた母親は、野球部の試合中「ロージン」へと形を変えて、エースの息子を見守り…『ロージン』

    事故で突然死してしまった若妻は、夫が大切に使っていたマグカップになって…『トリケラトプス』

    死んだことが理解できない幼い男の子は、母親と良く来た公園のジャングルジムに形を変えて、母親を待ち続け…『青いの』

    慕い続けた「先生」に想いを寄せていた女性は、かつて先生に贈った扇子になって…『白檀』

    図書館にしか居場所のなかった老人は、親切にしてくれた受付の女の子の「名札」になって…『名前』

    他、『ささやき』、『日記』、『マッサージ』、『くちびる』、『レンズ』の10編の連作短篇集と、番外編『びわの樹の下の娘』の11編から成る短編集。

    『あなたは何に「とりつき」ますか?
    死んでしまったあなたに、とりつくしま係が問いかけます。そして妻は夫のマグカップに、弟子は先生の扇子に、なりました。切なくて、ほろ苦くて、じんわりする連作短篇集。』だ、そうで。


    これは、あまりにも切ない…。

    大切な人のすぐ側に居ても、声をかけることも出来ず、気付いてもらえることもなく、ただ黙って見ているだけ、というのは私なら悲しすぎて耐えられない、と思う(子どもがいたら、もしかしたらなりたいもの、あるのかもしれないなと思えるけど、彼氏とか、旦那なら絶対嫌だなと…)。

    なので、『トリケラトプス』や『日記』のように、愛した人が別の人を愛するのを目の当たりにするなんて…想像しただけでも辛くて、とてもじゃないけど「それでいい」とは思えないだろうなぁと。

    そういうの以外の『名前』や『くちびる』、家族の『マッサージ』、『レンズ』は、何となくあったかくて良いお話と思えたけど、やっぱり切ないのは、切ない…。

    死んでから、思いの叶わなかった相手の側にある「モノ」になる、というのはアリだけど、かつて愛されていた人の側にいて、その人の新しい恋を見守ることが耐えられない…ということは、私はかなり嫉妬深い性格なのかも、と改めて考えさせられてしまった。

    「もしも…」の話は結構好きなので、これを読んで、自分ならと考えてみたけど、自分がいなくなった後、みんなが何一つ変わりなく生活しているのを見るのは結構悲しいので、絶対この世に戻りたくないなとも(自分の小ささを改めて思い知らされてしまったかも…)。

    JUGEMテーマ:読書
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      『長崎くんの指』東直子

      長崎くんの指
      長崎くんの指
      東 直子 2006年 マガジンハウス P.205
      ★★★★
      今は、もう、ここは、誰にも用がなくなってしまった。みんなみんな、どこへいってしまったのだろう。
       残された建物は錆びつき、ペンキが剥がれ、ゆっくりとこわれていく。かわりに、おずおずと新しい生き物が棲みはじめる。新しくなにかがはじまるまでは。

      失踪中の「わたし」が最後に辿り着いたのは、町外れの寂れた遊園地。
      そこで働く長崎くんのひと言で、職員用の仮眠小屋に寝泊りすることになった「わたし」は、ひと目見たときから、長崎くんのなめらかな白い指に魅せられてしまい、その指を自分のものにしたくて仕方なくて…『長崎くんの指』

      四十過ぎて職を失い、貯金もなく、アパートのガスも止められてしまった「わたし」は、疎遠になっていた八つ年下の妹に泣きつき、子守を条件に居候させてもらうことに。
      妹に頼まれ、甥っ子を連れて行った遊園地で、「わたし」は蝶の世話をする男に興味を惹かれ、翌日から一人で毎日遊園地に通いつめ…『バタフライガーデン』

      人目を引く美貌の持ち主で、子供の頃からモテモテだったにも拘らず、孤立していたという、遊園地のベテラン指導員の「マリアさん」。
      遊園地で働く前の、恋に傷つき、疲れ果てた「マリアさん」が、遠くから見えた遊園地の光を目指し、閉門された遊園地の壁をよじ登り、観覧車の下で出会ったのは…『アマレット』

      学校から帰った「麻実」が家の前で見つけた行き倒れの女性。
      得体の知れない記憶喪失のその女性を「道ばたさん」と名付け、しばらく家であずかることになり、すっかり仲良くなった「道ばたさん」と母と「麻実」の三人は、遊園地に遊びに行くことに。
      次々と乗り物に乗るうち「道ばたさん」に変化が訪れ…『道ばたさん』

      心霊スポットの特集記事の取材に、一人で遊園地に出かけた雑誌記者の「私」。
      幽霊がでると評判の洞窟に足を踏み入れ、道に迷ってしまった「私」を案内してくれたのは…『横穴式』

      そして、『長崎くんの今』
      寂れた遊園地「コキリコ・ピクニックランド」を舞台に繰り広げられる6編と、『夕暮れのひなたの国』――あとがきにかえて、から成る短編集。

      「気鋭の人気歌人が紡ぎあげた、鮮烈のデビュー小説集。」だ、そうで。


      これまた「ツボ」に嵌ってしまった…。
      何とも言い難い、不思議な面白さ。

      一番好きなのは『バタフライ・ガーデン』の、しょぼくれた中年に惹かれてしまった女の話。
      乏しくなった頭髪を、切なく思えるって…大人の恋だなぁと。

      『アマレット』の「マリアさん」の男運の悪さも、最後に辿り着いた場所の居心地の良さも、傷つかなければそこへは行けないのかもしれないと…すごく良い話。

      あそこも好き、ここも好きで、好きなところを抜き出せばきりがないかも。

      ところどころ、思わず噴き出してしまうほど可笑しくて、でも本当は切ないお話で。
      子供の頃、遊園地で遊んでる時って、こんな感じだったなぁと…遊んでる時には楽しくて楽しくて、でも帰るときには寂しくて…。

      表題作の『長崎くんの指』は、私も結構「指フェチ」なのか、男の人の顔よりも、まず指の動きに目が行ってしまうので、その指に魅せられる「わたし」の気持ちは良く分かる。

      流石に作者が歌人なだけあって、文章にリズムがあって読みやすいし、描写がとても生々しくて美しい。

      ただ、『長崎くんの今』は、知りたかったような、知りたくなかったような…。
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