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    『僕僕先生』仁木英之

    僕僕先生
    僕僕先生
    仁木 英之 2006年 新潮社 P.266
    ★★★★★
    「列子という人がね、よく言っていた。喜怒哀楽なんていうものはその場限りのものだ。時間が過ぎれば、状況が変わればあっさり変化するし、どんな強い感情も醒めてしまう。そして感情に絶対的な正解なんてない、ってね。でもだから心を無にして、とはボクは思わない。感情があるからこそ人間はいいんだよ。……」

    時は唐代、働くことも学ぶこともせず、ただぐうたらと一日を気の向くままに過ごし、父親がせっせと貯めこんだ、有り余るほどの財産を食いつぶし、いつか遠い異国の地に旅立つことに思いを馳せる22歳の青年、王弁。

    あまりのその何をもなそうとしない王弁の態度に業を煮やした父王滔から、近年この地に住み着いたと言う「仙人」に会いに行くよう命じられ、たくさんの供え物を担いで、一路仙人の住む黄土山へと向かった王弁。

    ようやく辿り着いた仙人の庵で、王弁の前に現れたのは、「僕僕」とふざけた名前を名乗るまだ十代半ばと思しき少女の姿をした仙人。

    「仙人にはなれない」ときっぱり言われたものの、何故か少女の仙人に気に入られた王弁は、弟子となって一緒に旅に出ることに……。

    「退屈してる暇はない!辛辣な美少女仙人と弱気なニート青年が、天地陰陽をひとっ飛び!
    第18回日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作
    選考委員大絶賛、大型新人の超快作!!」と、いうことで。


    「唐代」の話だけど、中国の歴史に全く詳しくない私でも、違和感なくさくさくと読める。
    いつの時代にも、どこの国にでも、現代で言うところの「ニート」とかはいても、おかしくなさそうだし。

    旅の途中で様々な人(?)達との出会いや経験を経て、ぐうたらだった王弁が成長していくのは、まあベタだけど、出会う相手が凄かったので面白かった。

    玄宗皇帝(白楽天の「長恨歌」を読むと必ず泣いてしまうので、この人のことは、まあまあ知ってる)や、渾沌(親切な人たちに、穴をあけられて死んじゃったという話も、おぼろげながら…)とか、少しでも知ってる名前が出てくるのも嬉しかったりした。

    なかなか艶っぽい場面もあったりなんかして、まあ、確かにその最中に可愛い少女の「僕僕」が「お爺さん仙人」の姿に変わってしまうことを想像すると、なかなか手を出せないというのも分かるかな。

    「僕僕」が王弁を弄んでいるようで、でも疲れたときには、その胸を借りてしまうとこら辺が可愛らしくて、最後の方は少し切なくなってしまったけど。

    でも、最初王弁の何を気に入ったのか?そこがいまいちピンと来なかったような(仙人様だから、こうなることを見越していたのか、仙人様のお力でこうなったのか…)。

    王弁も、仙人様も、登場人物のキャラが少し薄すぎたような気が…(印象に残ったのは、馬の「吉良」ぐらいかな)。

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