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    『どろ』山本甲士

    どろ (小学館文庫)
    どろ (小学館文庫)
    山本 甲士 2004/12/1文庫化 小学館 P.358 ¥650
    ★★★★
    まともな社会人として日常を送っている奴らの中にも、実はおかしなのがいくらでもいる。これまで運が良かっただけで、その運が尽きて事件が起きるのか。それとも人間というものは本来的に、ふとしたきっかけで狂いを生じさせてしまう生き物なのか。

    始まりはほんの些細なことだった…。

    二日連続して朝刊が抜き取られるという小さな「事件」が起こり、真っ先に隣人を疑ったのは、市役所に勤める岩室。

    三ヶ月前に隣に越してきた隣人、手原に庭の手入れのことを注意をしたことで、嫌がらせを受けたのだと思い込み、その報復に手原家の庭に犬の糞を投げ入れ溜飲を下げた岩室。

    ところが今度は、隣人の手原が岩室家の庭の花を全て手折るという報復に出たことから、岩室も後には引けなくなってしまい、二人の大人気ない「泥仕合」はどんどんエスカレートし、やがては家族や職場までをも巻き込んで……。

    『腑に落ちない出来事、ままならない日常。どんなにムカついても腹が立っても、「猫をかぶった状態」でやり過ごすのが、普通の大人である――が、仮面が一度剥がれてしまったら!?  隣の家の住人が気に入らんとか、上司がアホやからとか、とにかく日常にむかついている人、ここまでやってみませんか?おススメです。』だ、そうで。


    「ここまでやってみませんか?」の惹句には、「絶対やっちゃダメ!!!」と言いたくなるようなことばかりで(いや、本当に途中からはものすごいし、こんなこと普通はきっと考え付かない、と思いたい)。

    最初の時点で、お互いに注意されたことに対して少しでも対処していればこんなことにはならなかったのに、何で自分のことは「悪くない」と、許してしまうのか(そこが現代の人間らしいといえば、らしいような)。

    最初は「馬鹿馬鹿しい」ぐらいの報復合戦(それでも立派に器物損壊罪や脅迫罪などなどの○○罪というのがつくらしいけど)が、本当にどんどん「えげつなく」なっていくので、一体どこまでいったら終わるのかと思ったら、やっぱりそんなところまで…。

    その労力、別のところで使えばいいのにと読んでいてずっと思ってたけど、これはこれでこの二人にとって、ある意味「楽しみ」だったんだと納得。

    岩室も手原も、職場や家庭で様々な問題を抱えていて(どこの家庭でもあるような問題かもしれないけど、これも結構重かったりして大変だなと)、「嫌がらせ」がエスカレートしていくほどに、それらの問題に対しても強気になっていくというか、開き直っていく姿勢がなかなか面白い(人間一つのことに一生懸命になれれば、どんどん強くなっていくというか…ここでは「悪巧み」なんだけど、まあそれでもエネルギーには違いないかなと)。

    そして最後の最後まで…懲りてないというか、逞しすぎるというか、二人の力関係が全くの対等なので、これはこれでいいのかなと。

    JUGEMテーマ:読書
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      『かび』山本甲士

      かび (小学館文庫)
      かび (小学館文庫)
      山本 甲士 2006/7/1文庫化 小学館 P.435 ¥690
      ★★★★★
       仮に、労災の認定を取るために闘えばどうなるのか。ヤサカは当然のことながら労災にはならないと主張し、訴訟に持ち込まれる。……そして十年越しの争いに勝って、マスコミからマイクを向けられて「長い闘いでした。やっと春が来たという感じです」などとコメントする。そのとき、自分は何歳になっているのだ。それまでの間、どうやって食べていくのか。
       とんでもないことだと思った。そんなことをして世間からほめられたくはない。
       ではどうする?

      化学製品を取り扱う中では、最大手の企業「株式会社ヤサカ」の本社や関連工場が立ち並ぶ企業城下町、八阪市で「ヤサカ」グループの恩恵に与りながら何不自由なく暮らしていた35歳の主婦、伊崎友希江。

      「ヤサカ」の研究所で研究員として働く夫との夫婦仲はとっくに冷め切り、4歳になる娘を可愛がるあまり何かと干渉してくる義母や、日常の些細なことに不満を溜め込みつつも、できるだけ周囲との摩擦を避け、つつがなく暮らす小市民、友希江を襲った突然の不幸…。

      夫、文則が勤務中に脳梗塞で倒れてしまい、会社での激務が原因ではないかと考える友希江をうまくいいくるめ、会社側はある提案を持ちかける。

      退院の目途もたたない夫を、体よく厄介払いをしようとする会社側の態度に不信感を覚えた友希江は、思い切って新聞社に投稿してみることに。

      ところが「ヤサカ」の権力をもって当然の如く友希江の些細な反乱は握り潰され、友希江の兄妹たちの職場にまで圧力をかけられてしまい、友人にも手ひどい裏切りに合ってしまう。

      パート先でも諍いを起こし、クビになった友希江は次第に「薬」に依存するようになり、とうとう常軌を逸した復讐に手を染めることに…。

      『もう我慢はしない!
      「身体を壊すまで働かせて、後はさいならですか」
      倒れた夫に代わって、主婦たったひとりで大企業に「宣戦布告」!
      人間誰しもが孕む狂気を、緻密に描き出す「巻き込まれ型小説」の傑作、ついに文庫化!』だ、そうで。


      以前、す〜さんのブログで見かけて、奥田さんの『邪魔』のような「壊れていく主婦」というのが気になって…本屋さんでわざわざお取り寄せしてもらってしまった(Amazonでも良かったけど、送料無料にしようと、ついつい買いすぎてしまうので…)。

      舞台が大阪で、大阪弁というのも、ちょっと迫力倍増なのかも。
      娘の幼稚園での他の父兄との諍いの際に心の中でつく悪態なんかは、いかにもだし、ねちっこいし、えげつないし…。

      友人との罵り合い(専業主婦VSキャリアウーマンの図式)も、本音も、良くわかるなぁと。

      まあ依存する「薬」というのも、いわゆるそういうのじゃなくて、そこら辺にあるようなものなんだけど、そんなになってしまうものなのかと…(あくまでも友希江は飲みすぎなんだけど)。

      その常軌を逸した壊れっぷりは、本当に怖いし、普通に犯罪だし、よく普通の主婦がこんな恐ろしくて手の込んだこと(あっちこっち行ったり、お金もかかるし、考えただけでも面倒くさいのに)考え付いたなぁと、ある意味感心してしまった。

      でも、それだけ追い詰められてしまって、ここまでやるとは天晴れなのかもとも(強いというか、恐いというか何というか)。

      こんなこと、どこの企業でもありそうなことだし、泣き寝入りしてる人がほとんどなんだろうなと(確かに裁判とかになったら、時間もお金もかかるし、その間どうやって生活すればいいのやらと、他人ごとながら考えたことあるし)。

      まあ、ここまでは誰もやろうとは思わないだろうし、真似はできないだろうけど、その手口のせこさというか、そこから狙うかというのが、いかに大企業の社長でも、泣き所があるというのがなかなか面白かったかな。

      ラストまで気を抜けないのも、うーん…なかなか好きな終わり方かも。

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        『わらの人』山本甲士

        わらの人
        わらの人
        山本 甲士 2006年 文藝春秋 P.331
        ★★★★
         しばしのまどろみの後、「起こしますよ」との声で目を覚ました。自動椅子が起き上がり、かえでは鏡と向き合った。
         誰、この人。かえでは半ば放心状態で見つめた。……
         女性理容師が笑っている。
        「似合うわ、とても」女性理容師が満足げにうなずく。〜『守の巻』より〜

        恋人もなく、高圧的な上司、生意気で神経に障る後輩に囲まれて、孤独感や自己嫌悪に陥る、気の弱すぎる、三十歳を目前に控えたお局様、須川沙紀。
        髪型を変え、イメージチェンジすることで、何かが変わるかも、と期待に胸を膨らませ、以前から気になっていたという、女性が一人できりもりしている「理容店」に足を踏み入れた。

        お喋り好きな店主の話に付き合い、マッサージされ、うとうとしてしまった沙紀が目を覚ますと、鏡の中には、別人のようになった自分の顔が…『眉の巻』

        山中で目覚めた記憶喪失の男は、とりあえず働き口を探すため、面接に行く前にぼさぼさの髪を整えようと「理容店」に足を運ぶ。
        うとうととした男が目覚めたときには、どう見てもその筋の人としか思えない髪型にされていて…『黒の巻』

        春休みのしばらくの間、祖父母の家に泊まることになった小学五年のちひろ。
        活動的なおばあちゃんとは対照的に、定年退職後の暇を持て余したおじいちゃんの散髪に付き合ったちひろは、頼んでもいない髪型にされてしまい、不機嫌になってしまったおじいちゃんのために、その髪型に似合いそうな、お誕生日のプレゼントをあげることに…『花の巻』

        父親のきりもりする「うどん屋」を馬鹿にして、後を継ぐことを受け容れられず、就職活動に奔走する就職浪人中の青柳真水。
        大学の先輩達のツテを頼り、中途採用してくれそうな企業をいくつか訪問し、学生時代とは人が違ってしまったようなOG達に何人も会ううちに「組織は人を変えてしまう」ことを思い知らされ…『道の巻』

        新社長の提案で登山研修に参加することになり、行動を共にすることになったのは、陰では「ジュニア」と呼ばれる社長の息子、ジュニアに取り入れば先は安泰と考えている開発企画課の課長、保坂、そして仕事に無駄が多いと上司から評価を下された、温厚な性格で他人に気遣いばかりする、頼りなげな男、営業第二課の主任の大供の三人。
        ジュニアの指示に従い険しい山道を登る三人は、たちどころに道に迷ってしまい…『犬の巻』

        何者かにマンションの部屋に侵入されたことから、恐怖心に駆られ、防犯に目覚めた、岩瀬かえで。
        鍵を取替え、窓も強化し、ストーカー対策のため、見た目を変えることを思い立ち、何かに導かれるように雨宿りに入った、初めての理容店で髪をカットしてもらうことに。
        店主に事情を打ち明け、まどろみの後、鏡に映ったのは…『守の巻』

        「初めて入った理髪店。女主人のおしゃべりにウトウトしているうちに、髪型はすごいことに!
        そのせいで、いつしか性格まで変わっていき、とんでもない出来事が……。
        髪型の変化が巻き起こす、愉快、痛快、爽快な「事件」を描く連作短編集。
        人生を変える理容店ってあるかも。」だ、そうで。


        髪型によって性格まで変わってしまうというのが、なかなか目のつけどころが面白い。
        女の人には良くあることのようだけど、男の人もまあ、パンチパーマとか、七三だとか、判りやすければ、それによって職業とかもある程度想像つくから、そういうものなのかもしれないなと…。

        ここに出てくる人たちは、『眉の巻』以外は、みんなとんでもない髪型にされてしまうけど、文句を言えないところが、小市民っぽくて共感できてしまう(私も美容院で、どんなにされても文句が言えない小心者なので…)。

        そして髪型に合わせて、主人公達がどんどんそれらしくなっていくのが、読んでいて痛快。

        装丁のイラストの中に、それぞれの巻の主人公を探すのも楽しかったりして。

        みんなが立ち向かうのが、世間一般的な企業とか、そういう身近なものだったりするので、「これって、うちの職場のこと?」と、かなり驚いてしまった。

        こんなこと、本当に出来ればいいのになと思える話ばかりで…。

        「理容店」は、子どもの頃にしか行ったことないけど、あの顔の産毛剃りの前に刷毛で塗られる生暖かいクリームみたいなのの感触は今思い出してもかなり気持ち良かったなと。

        この店に行けば、自分はどんな髪型にされてしまうのかなと、想像すると恐ろしいような気もするけど…。

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