『果てしなき渇き』深町秋生

果てしなき渇き
果てしなき渇き
深町 秋生 2005年 宝島社 P.403
★★★★★
「殺してやる」
彼女はぼくに教えてくれた。絶望の底から見える希望の光が、どれほどまぶしいものかを。
「殺してやる」
彼女はぼくを陥れた。魔法を使って、ぼくを人から畜生へと変えた。
頭上のバットが震えた。殺せ。ぼくが浴びせられた暗黒をわけ与えろ!

凶悪なコンビニ強盗事件が発生し、現場に真っ先に駆けつけたのは大手警備会社に勤務する元警察官の藤島。

犯人の目星もつかず、目撃者探しに躍起になる元の同僚達から何度も犯行当日の様子を聞かれる藤島の脳裏には、あまりにも凄惨な事件現場の惨状がこびりついたまま、薬で精神を安定させる毎日。

そして世間からコンビニ強盗事件が忘れ去られようとしていた頃、藤島の元に二度と会うはずのなかった別れた妻からの緊急の電話が入り、娘が失踪したことを知らされる。

娘の部屋で見つけたある物を隠すため、警察には届けず、藤島は自らの手で娘の捜索を開始した。

しかし、友達から聞かされる娘の実態は、仕事にかまけ、家庭を顧みなかった藤島の記憶の中の娘、成績優秀で、妻に似て美しく、少し大人びた女子高生の娘、加奈子のものとはかけ離れたものだった。

そして、藤島が最初に話を聞いた加奈子の友達の一人が何者かに殺害され、藤島自身も複数の男たちに襲われ…。

「『このミステリーがすごい!』大賞 第3回 2005年大賞受賞作
全選考委員が圧倒された暗き情念の衝撃作!!
失踪した娘を探し求めるうちに、徐々に“闇の奥”へと遡行していく父。
娘は一体どんな人間なのか――。ひとりの少女をめぐる、男たちの狂気の物語。
その果てには……。」だ、そうで、ちなみに、『サウスポー・キラー』とのW受賞。


何とも胸糞の悪くなるお話で…。
主人公の元警察官(て、本当?と疑いたくなるような)、藤島の鬼畜っぷりは、これまで読んできた鬼畜系の中の「許せない度」では、群を抜いてるかも。

それでもって、「娘への愛」だの「許されるだろうか」だの…あまりにも愚かしすぎて、言葉も出ない。

現在の加奈子の行方を追う藤島の話と交互に語られる、三年前の加奈子の同級生、いじめの標的にされる瀬岡の章の方は、これもまた悲惨な話だけど、ぐいぐいと引き込まれるように読んでしまった。

いじめの標的にされるまでの過程が、「こういう理由もあるのかな…」と考えさせられたというか、「そんなことで?」とも思うけど、現実の事件を見てると殆どが、些細なことがきっかけみたいなので。

この物語の中で、この子だけはまともなのかと思ってたのに、それさえも…本当とことんまでやるなぁという救いのない話。

「私の青春は暗かった。『果てしなき渇き』では、そんな過去を嫌々思い出しながら書いた。これは孤独と憎悪に耐えかね、疾走する人間達の悲しみを描いた作品である。友愛や和気を著しく欠いているために、激しい拒否感を抱く方もいるだろう。けれど同時にこの小説の世界に共感を覚える方もきっとどこかにいてくれるはずだとも思う。なぜなら慈愛に満ちた世界を疎み、燦々と輝く太陽に向かって唾を吐きたいと願う人間は、私だけではないはずだと、固く信じているからだ。」
との、作者自身によるコメントを読むと、まあこういう話も納得できるかな…。

でも、藤島の「孤独」て…、自業自得だし、そもそもその時に何で捕まらなかったのかが不思議…。
狂気のみで、「悲しみ」なんて、まるで伝わって来なかった。

自身も変態男の台詞「この国の男どもは変態ばかりになった。女学生が好きだ。少年の尻が好きだ。…」だけには、妙に共感できたけど。

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