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    『ボーナス・トラック』越谷オサム

    ボーナス・トラック
    ボーナス・トラック
    越谷 オサム 2004年 新潮社 P.315
    ★★★★★
    なんちゅうか、世の中捨てたもんでもないよね。この世には轢き逃げする外道もいるけど、その現場に花を置いてってくれる人だっているんだもんな。いい奴ばっかりじゃないけど、悪い奴ばっかりでもない。そんな当たり前のことが、今はよくわかる。ところでそのへん、あの世はどうなってるのかしらん? みーんないい人だったらいいよな。甘いかな。行ったことがないから、まだわからん。

    業界大手のハンバーガーショップのチェーン店で、早朝から深夜までの恐ろしく長い勤務時間、文句も言わずにこつこつと真面目に働く、就職して二年あまりの下っ端社員草野は、ある雨の夜、寝に帰るだけのワンルームマンションへの帰り道、猛スピードで走り去っていく車と、道に転がる男を発見してしまった。

    恐る恐る道路に横たわる男に近づき、声をかけ、蘇生法を試みるも、男は息を吹き返すこともなく…。
    ようやく死んでいることに気付き、慌てて110番して車に戻り、死体に脅えながらパトカーを待つ草野がひとりつぶやくと、誰かが返事をしたようで…。

    エロビデオを借りに行く途中で事故に遭い、「どうにも俺は運が悪い」と自分の死体を見下ろしながら、つくづく実感していたのは、地元からの脱出を試み、ようやく受かった東京の二流半の大学に通う横井亮太。

    亮太の周囲の人間のなかで、唯一草野にだけ、自分の声が届くことを知り、自分の死体に口移しの人工呼吸までしてくれた親切な男、草野の車に無断で乗り込み、勝手に家に泊まらせてもらい、職場にまでもついて行き…。

    雨に打たれたせいで、風邪をひいて寝込んでしまった草野が目を覚ますと、そこには自分が第一発見者となった死んだはずの男の姿が。

    熱のせいで幻覚が見えるのだと思い込む草野を説得し、亮太は、自分を轢き逃げした犯人探しを手伝ってくれるよう頼み込むのだが……。

    「こいつ、なかなかいい奴だ、幽霊であることを除いては。ハンバーガー屋で働く僕は、彼を殺した犯人探しに巻き込まれて…。ユーモアホラーの快作。第16回ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。」だ、そう。


    階段途中のビッグ・ノイズ』にメロメロになったので、気になっていたこちらも読んでみた。

    青春王道物の『階段途中のビッグ・ノイズ』といい、幽霊王道物の『ボーナス・トラック』といい、どちらもベタな話のはずなんだけど、それが越谷さんの手に掛かると、めちゃくちゃ新鮮で、面白くなってしまうから、あら不思議。

    文章のリズムが良いのか、キャラが良すぎるのか、私との相性が良いのか、まあ、全てなんだろうけど…。

    ハンバーガー店の数少ない社員として、アルバイトさん達を取りまとめ、指示を出す立場なのに、どこか頼りなげな草野に的確なアドバイスをする、生きてる時はヘボヘボだった亮太と、幽霊になった亮太の存在を受け容れて、まるで友だちのように接する草野との関係が、すごく良い。

    大学時代の遊び放題の生活から一転して、社会人の辛さを実感する草野への、亮太の言葉も、幽霊ならでわで。

    死んでしまったことで、生きている人間から蚊帳の外に置かれてしまった亮太がポツリとつぶやく「なんで仲間はずれにされなきゃいかんのかね」の台詞は、実は死ぬのが怖いって、こういうことなのかも知れないなと…(まあ、死んだ後、全く意識がこの世になければ問題ないとは思うけど…やっぱり自分のいなくなった世界で、みんながこれまで通りに普通に生きているというのは、何だか寂しいような)。

    亮太がぼろくそに言って、あとでファンの南君に申し訳なく思う、巨漢で無骨で頼もしいアルバイトの南君が好きな歌手の歌姫と、鼻血だらだらの四人組のジャケットの曲が最後まで気になってしまった…。わからん。

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      『階段途中のビッグ・ノイズ』越谷オサム

      階段途中のビッグ・ノイズ
      階段途中のビッグ・ノイズ
      越谷 オサム 2006年 幻冬舎 P.302
      ★★★★★
      「楽しいから」自分でも不思議なほど、自然にそのひと言が出てきた。「最近、四人で演るのがすっごく楽しくって。一人でギター弾いてたときには、こんな楽しさは一回も感じられなかった。……とにかく、どうしても今年の『田高マニア』には出たいんだ。四人であのステージに上がるんだ。四人でドカンとやるんだ。それが理由じゃ、変?」

      郊外の田園地帯の真ん中にポツンと位置する県立大宮本田高校。
      文化祭のイベントの目玉である「田高マニア」によって、一時はその名を県外にまで知らしめた大宮本田高軽音楽部は、ヒップホップをはじめとする、ダンス・ミュージックの台頭により、部員数も大幅に減り、荒廃しきっていた。

      練習場所兼楽器置き場が、旧校舎西端のA階段四回−屋上間という軽音楽部で、屋上で煙草をふかす先輩たちの見張り役をやらされながらも、ただ一人部に残り、地道に練習を重ねていた二年生の神山啓人は、新学期が始まったばかりのある日、校長室へ呼び出され、3年生二人の不祥事の後始末による突然の廃部を言い渡される。

      理不尽な廃部決定に、泣きながら、階段で楽器の後片付けをしていた啓人の前に現れたのは、軽音楽部に入部して二週間で、部活に顔を出さなくなった幽霊部員、九十九伸太郎。

      先輩からの言いつけ通りにボリュームを絞り、ギターを弾き続けていた啓人を陰ながら見守っていた伸太郎は、この処分に納得がいかないと、啓人を連れて息巻いて校長室へ乗り込み、校長に直談判し、とうとう条件付で、軽音楽部の存続を認めさせることに成功する。

      校長から提示された条件は三つ。
      予算においては、一切学校からの支援を受けないこと、部活中は常に顧問の監督をつけること、半年以内に何らかの成果を挙げなければ、予定通りに廃部すること。

      そして啓人と伸太郎の二人は、顧問を引き受けてくれそうな教師を片っ端から当たり、部員を募り、半年後に控える「田高マニア」で演奏し、部の存続を認めさせることを目標に奔走するのだが…。

      「ボーナス・トラック」で、第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した越谷オサムによる「青春、かもしれない」小説。ものすごく青春小説。


      爽やか、めちゃくちゃ爽やか。
      「ウォーター・ボーイズ」を彷彿させるような…笑いあり、恋あり(少々)、涙ありの、感動もの。

      後に部員なってくれる、実はギターもドラムも何でも人並み以上で、異常に髪の乱れを気にするワケありの美少年、嶋本勇作も、図体のデカい「長谷川さん命」の坊主頭の岡崎徹も、変な髪形の顧問の加藤先生も、理解ある校長先生も、カタブツ教師の森先生も、それぞれのキャラがすごく判りやすくて、何だかドラマを見ているみたいに、頭に浮かんできた(加藤先生は、どんな役でも嵌る竹中さんを思い浮かべてしまったけど)。

      真夏の地獄的な暑さの中、それまで閉まりきってた屋上の扉が開いた瞬間は、ものすごい開放感を感じて、読んでて気持ち良かった。

      まあ、部員が集まっても、演奏が上手くなっても、彼らを待ち受ける試練は多々あって、って、お決まりのパターンだけど、それでも面白い。

      彼らの演奏するロックは、多分どれも一度は耳にしたことあると思うけど、ちゃんと知ってるのはクィーンとKISSの曲しかなかった。
      これ全部知ってる人には、すごく受けそう。

      髪フワの、美少年、嶋田がまさか平井堅二のネタをやるとは…(本人は自覚してないとは思うけど)。
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