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    『この指とまれ−GONBEN−』小川勝己

    この指とまれ  -GONBEN-
    この指とまれ -GONBEN-
    小川 勝己 2007/9/25発行 実業之日本社 P.401 ¥1,890
    ★★★★★
     意地の悪い言い方をすれば、夏樹にとっての爛咼献優広瓩箸蓮金儲けの手段ではなく、他人とコミュニケートできる唯一の手段なのだろう。この爛哀襦璽廰瓩蓮彼にとって、生まれてはじめてできた居場所なのだろう。そしておそらく本人は、自分の本心に気づいていない。
     しかしそれは――と博貴は思う。それは、おれも似たようなものかもしれない。
    居酒屋で知り合った美女と巨乳の二人組に嵌められ、連れて行かれた飲み屋でとんでもない金額を請求されることになった、サラリーマンの二人連れ。

    その場は何とか逃れられたものの、後日会社に取り立て屋がやってきて、男たちの身には破滅が訪れることに……。

    プロのような鮮やかな手口で、「ぼったくりバー」を発端とする、大口の詐欺を仕組んだのは、他の女に男を奪われた腹いせに「金持ちになって見返してやる!」と、半分冗談のような理由から、次々と犯罪行為を繰り返しては大金を稼ぐようになった、夏子と歩の女子大生二人。

    二人が仲間に引き入れたのは、犯罪者となってしまった父親を持ち、母親と弟のために金を必要としていた、気の弱いスキー部の後輩、博貴。

    身近な母親の死をもって知り、「アルコール依存症」になることを誰よりも恐れている、キレたらとことんまでいってしまう夏子のバイト先のボーイ、前科のある夏樹。

    そして、歩に思いを寄せる庸司、中国からの留学生王維、介護福祉士を目指す美代子。

    「金」だけで繋がっているというドライな関係の7人の「仲間」たちの詐欺の標的は、次第に大きな組織を巻き込むこととなり、やがては命を狙われることになるのだが……。

    第一章『他人の不幸は蜜の味』、第二章『情けは人の為ならず』、第三章『百害あって一利なし』、第四章『人を呪わば穴ふたつ』、第五章『善人猶以て往生を遂ぐ、況んや悪人をや』
    から成る、それぞれの登場人物からの視点で描かれる連作短編集のような、実は長篇もの。

    『最強の知能犯たちが罠を仕掛け合う
    ノンストップの札束争奪戦!
    鬼才が満を持して放つ傑作青春クライムサスペンス!
    「負け組人生」から抜け出すため、女子大生の歩と夏子は詐欺グループを結成。自らの犯罪を“ビジネス”と称して、カモを騙し続ける彼女たちの運命は…。』だ、そうで。


    犯罪の内容が難しすぎて…「ぼったくりバー」とか、「ワンクリック詐欺」とかは、まだわかるけど、コンピュータを駆使するあたりのは、まるでちんぷんかんぷんで(まあ、私みたいなど素人に理解できてしまうような犯罪なら、犯罪にならないのかもしれないけど)。

    最初の方の、半ば強引に詐欺の仲間にひきずりこまれた母親と弟思いの博貴の、犯罪で手に入れた金を、全て家族の為に…というところや、アルコール依存症の夏樹が、自分を襲った中学生俊明のために、仲間に仕事を依頼するあたりなんかは、何となく『必殺』っぽいなと思えて、「あれ?小川さんなのに、どこか爽やか(犯罪だけど)」と…。

    でもやっぱり中盤辺りから、ただでは済まなくなってきたというか、何もそこまでしなくても…という感じで、読後感は最悪かも(嫌いじゃないけど)。

    最後は、「そんなあほな」と思えるような展開だけど、恋心とは、時としてそれ程のものかなとも思えてしまったし。

    これまで小川さんのを何作か読んできて、どの登場人物も好きになれなかったけど、今回だけは、夏樹のキャラが良くて(やり過ぎなとこもあるけど、優しいし…)、好きになってしまった(便秘を隠す辺りが、ちょっとツボに嵌って…)。

    去年の今頃に読んだ『イブの夜』もそうだったけど、序盤と中盤からがこうも印象が変わるのは、良い意味で裏切られて、こういうのも好きかも(でも、やっぱり『僕らはみんな閉じている』のようなのが、もっと読みたいかな)。

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      『あなたまにあ』小川勝己

      あなたまにあ
      あなたまにあ
      小川 勝己 2004/10/25発行 実業之日本社 P.216 ¥1,575
      ★★★★★
      あなたまにあは あなたが怖い
      なぜならあなたは わたしじゃないから
      だからあなたが 目覚める前に
      あなたをわたしに 変えましょう

      都会からの垢抜けた転校生の少女に嫉妬していた幼い頃の「私」は、彼女が大嫌いだという「がまがえる」を田圃で捕まえたことから、ちょっとした悪戯を思いつき…『蝦蟆蛙』

      「結婚してくれなければ東京へ行って働く」と迫られたものの、家庭の事情から、彼女の人生を引き受ける余裕のない「ぼく」には彼女を引き止めることもできず…。そしてグラビア・アイドルとしてデビューした彼女を忘れられずに居た「ぼく」は、約束の日に約束の場所で再び彼女と出会い…『聖夜』

      しょっちゅう家に遊びに来ては無神経に振舞う、いつまでも昔のまま変わらずにいる高校時代の友人を心の中で罵倒する「あたし」。「あたし」の夫をあからさまに嫌悪する彼女が置いていった写真が元で、「あたし」は夫を殺害してしまい…『春巻』

      ケータイの壁紙の息子の写真を見ては「俺に似なくて良かった…」と顔をほころばせる借金まみれのやくざの男は、別れた妻と、会わせてももらえない息子のために自らすすんで鉄砲玉になることを志願するも…『壁紙』

      卒業生とばったり会い、飲みに誘われて嬉しさを隠せない人徳のない高校教師に仕掛けられた「どっきり」とは…『諧謔の屍』

      大人の女性に嫌悪感を抱く男は、同じアパートに住む幼い少女が自分との約束を忘れ、大人になっていくのが我慢できずに…『蘆薈』

      空想に耽ることが大好きな、学校にも近所にも友達のいない小学生二年生の女の子の遊び相手は、近所に住む「和島のお兄ちゃん」ただ一人。その日も、いつものように二人は空想の世界で遊んでいたはずなのに…『あなたまにあ』の、7編から成る不気味な短編集。

      「わたしはあなたのすべてが欲しい――
      背徳・妄執・恐怖が渦を巻く異空間の彼方に置き去りにされたあなた……あなた、あなた!
      愉悦にまみれたあなたの狂気は、どこへたどりつくのか!?
      異能作家・小川勝己があなたに捧げる傑作怪奇小説」だ、そうで。


      うーん、どれも気持ち悪いのは充分気持ち悪いけど、期待していたほど(新堂さんの『吐きたいほど愛してる』みたいな…)ではなかったかも。

      「がまがえる」の話は、何となく楳図かずおさんの漫画(大好き)に出てきそうな、かなりの気持ち悪さで、想像しただけでも鳥肌が立ってしまう…。

      『春巻』の、主人公が夫の行為で許せなかったこと…は、なるほどそうかもねと、ものすごく納得できたような。これも想像したら「ぐえっ」という感じ。

      『聖夜』はなかなかロマンチックな話かと思いきや、やっぱり最後はそうなるのかと、まあ期待を裏切らないといえば裏切らないお話で…どのお話も、ラストの「ぞっとする感」はなかなか良かった(なかでも一番は『あなたまにあ』)かな。

      引用部分の「エピグラム」の意味もよく分かるような…だし、あと、挿絵が何となく昔っぽくて、不気味な感じが可愛くて素敵(「かえる」好きなもので…)。

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        『彼岸の奴隷』小川勝己

        彼岸の奴隷
        彼岸の奴隷
        小川 勝己 2005/10/15文庫化 角川文庫 P.486 ¥820
        ★★★★★
        どんなに大切な人も、みんないつかはいなくなっちゃうんですよ。会えなくなっちゃうんですよ。どんなに楽しい思い出があったって、全部ぜーんぶ過去のことになって、忘れられちゃうんですよ。だったら、ずっとそばにいてくれるようにすればいい。ずーっと一緒にいられるように、ね。だから、その人と自分が一緒になっちゃえばいいんです。行き違いなんてものが生まれたり、いつか自分を拒絶するかもしれない相手の感情ってものをなくしてしまって……

        両手首と頭部を切断された、50代から60代と見られる女性の死体が発見された。
        ほどなく頭部だけは別の場所で発見され、捜索願が出ていたため、被害者は保護司をしていたという大河内聰子、60歳と判明する。

        本庁と所轄との合同捜査本部が設置され、被害者の一人娘、涼に聞き込みに当たることになったのは、老人を死に至らしめた小学生達を病院送りにしたことで、本庁の四課から所轄にまわされたベテラン刑事、和泉と、キャリアだった父親を目の前で射殺されるという経験を持つ、捜査一課の蒲生のコンビ。

        四課にいたことから、裏で暴力団幹部と密接な関係を持つ和泉と、妻に「変態」呼ばわりされ娘を連れて逃げられ、現在は日に一度、留守番電話に吹き込まれる一人娘の声を聞くことだけが唯一の生きがいとなっている蒲生。

        蒲生は、警察署内で被害者の娘とすれ違った和泉の反応から、和泉が被害者と過去に何か関わりを持っているのでは、と疑い、独自に和泉の過去を調べることに。

        殺害された女性は、一度は和泉の義理の母親として、そして和泉が生涯ただ一人愛した女性として、和泉の記憶に刻まれていた女…。

        そして生前の被害者の目撃証言から「しらいし」という名を耳にした和泉は、懇意にしている暴力団の若頭、矢木澤に、自分自身の手でぶっ殺したい相手「白石」の捜索を依頼することに……。

        「血と暴力に彩られたあらゆる罪悪が襲いかかる狂気のクライム・ノベル。鬼才・小川勝己が描く、救いのない、背徳的な快楽に満ちた世界から、あなたは抜け出せるか――。」だ、そうで。


        何となく気分が落ち込んでいたので、ぶっ壊れた人達の話が読みたくなってしまって…これは確かに「クライム・ノベルの最終兵器」と称される小川さんの名前に違いのない「鬼畜系ノワール」。
        特に前半は、世のお母様方が読んだら失神してしまいそうなほど、目を覆いたくなるような酷い話ばかりで(よくこんな非人間的な、残酷なこと思いつけるなぁというか)。

        「まともな人間が一人も出てこない」というのも納得(自分の思い通りに男をオモチャにしようとする「脳天パー」が口癖の、自分が脳天パーな女や、自分を拒絶する女にしか興味を示さない変態サディストのちびっこ暴力団幹部や…)だけど、予想していたよりも案外まともだったような。

        感情をなくした人間のような蒲生のことも、少し理解できるかも(過去に感情が壊れすぎてしまったというか…少しだけ同情したくなる)。

        いつかは離れていってしまう相手と、ずーっと一緒にいるためには…という気持ちも分からなくはないような(ただ、そこまでの「愛」を私は知らないので、絶対そんなことしないと思うけど)。

        こういうの嫌いじゃないし、たまに無性に読みたくなってしまうのは何でだろうと思ったら、解説で、小川さんのことを「1970年代角川文庫の申し子。昭和四十年代以降の生まれのための、まさにあなたのための犯罪小説家」と紹介されていたので、妙に納得。

        確かに私の青春時代は黄金期の角川映画とともに、だったなぁと、しみじみ……。

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          『まどろむベイビーキッス』小川勝己

          まどろむベイビーキッス
          まどろむベイビーキッス
          小川 勝己 2005/8/25 文庫化 角川文庫 P.317 ¥620
          ★★★★★
          わたしたちって、名前があってないようなもんなんじゃないかって、たまに思うんですよ。源氏名はもちろん、本名も記号みたいなもんで、実はAとかBとか、その一とかその二とあんまり変わらないんじゃないかって。それは名前だけじゃなくて、なんと言うかな、わたしたちの存在そのものが、ただの記号なのかもしれない、とか

          西東京市にある「パブ&クラブ・ベイビーキッス」でキャバ嬢として働く「みちる」。

          過去の失恋をひきずり、福岡から出てきて一人暮らしをする「みちる」は、誰にも嫌われたくないと考えるあまり、店での立場も微妙なものに…。

          キャスト達との悪化する人間関係にも嫌気がさし、唯一自分の安全な居場所を見つけるため「みちる」は、SHIHOというハンドル名でHPを開設し、そこに訪れる人たちとのやりとりと、メールだけを楽しみにする毎日。

          ところが、リンク先を辿って訪れたHPでの、「みちる」の不用意な書き込みが誤解を呼び、SHIHOのHPが荒らされてしまい、唯一の居場所を失ってしまった「みちる」の怒りの矛先は意外なところへと向けられることに…。

          「嘘、いじめ、そして孤独――。悪意うずまくキャバクラ、ベイビーキッスで働く女性たち。彼女たちの哀しいまでの狂気を描いた戦慄のクライム・ノベル!」だ、そうで。


          「まどろむ」=「MAD−ROM」というタイトルそのまんまの話で。

          中盤までは、キャバクラ「ベイビーキッス」内の癸吋ャストと癸殴ャストとの確執や、二人にとって驚異的な存在になる新人へのいびり、みたいなのが描かれてて、なんとなくだるい展開だったけど、みちるが行動を起こしてからは、結構スリリングで、意外性もあって面白かった。

          ぼくらはみんな閉じている』のような、妄想や狂気を期待したけど、どちらかと言えばコミュニケーション不全の方だったのかな。

          「みちる」は、相当粘着質な性格というか、被害妄想入ってるし「そんなことぐらいで…」と思わなくもないけど、これが最近のよくある犯罪のパターンなのかもしれないなと。

          「だってあなた、好きって言ってくれなかったから。言葉にしなきゃわかんないのかよって言ったけど、わたしが欲しかったのは言葉だから。…」という「みちる」の孤独感は解るけど、覚悟を決めた人間の「一晩でいいから、夢見させてよ」というのは、「好き」より重い言葉だったような…。

          幸せをみすみす逃がしているというか、求めるばっかりで与えようとしない「みちる」の人間性の、そこが哀しい。

          何でもすぐに他人のせいにして自分を正当化しようとする昨今の犯罪の風潮とか、顔の見えないネット上での文字だけのやりとりから生じる誤解とか悪意とか、そういうのが、ぞっとするほどリアルに描かれていて、自分も気をつけないといけないなと、なかなか考えさせられてしまったかも。

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            『ぼくらはみんな閉じている』小川勝己

            ぼくらはみんな閉じている
            ぼくらはみんな閉じている
            小川 勝己 2003年 新潮社 P.248
            ★★★★
             いや、そもそもほんとうの愛美なんて――ほんとうのぼくなんて、この世にはいないのだ。ぼくがぼくと思っているぼくと、愛美が思っているぼくは、まったくの赤の他人だ。ぼくの仲間たちの思うぼくは、それらとはまた違う人間だ。……
             だからぼくらは閉じている。自分の観念の世界でしかないものを、現実だと思って生きている。それを他人も共有していると信じて疑っていない。現実のかたちは人の数だけある。ぼくらはそれを忘れていたのだ。知らなかったのだ。
            点滴を自らの手ではずしてしまう年老いた父親に甲斐甲斐しく付き添い、周囲からは親思いの優しい娘と思われているはずとほくそえむ真砂子。
            婚期を逃がし、人生がなにもかもうまくいかないことを全て、ベッドに縛り付けられている「寄生虫」のような父親のせいにし、「死ねばいい」と思う真砂子の取った行動は…『点滴』

            ミュージシャンになるという夢に挫折した金田は、ボクシングの腕を見込まれ、ヤクザに拾われ、舎弟となった。
            シャブ中の女と一緒に暮らす金田は、初めて会った時の彼女の笑顔をもう一度見たいと願うあまり…『スマイル・フォー・ミー』

            暴君のような夫に隠れて、46歳の妻は中学生の美少年との情事に耽り、嫉妬に狂い…『陽炎』

            見知らぬ男にいきなり拉致監禁された大学生は、自分がこのような目に遭わされた理由に辿りつき…『ぼくらはみんな閉じている』

            家とは別に仕事場所を持つ作家は、忘れ物を取りに帰った自分の家で、自分の知らない妻の別の顔を知り、寝室に隠しカメラを取り付けて…『視線の快楽』

            思いを寄せる彼女の言葉にショックを受け、正体不明になるまで酔いつぶれたサラリーマンの男は、朝、ホテルのベッドで目覚め、隣に見ず知らずの自分の母親より年上のような女がいることに驚愕し…『好き好き大好き』

            羽子板の押絵師の男は、絵の中の女に恋をした兄の願いを聞き入れ、羽子板の中で二人を一緒にさせてやるのだが…『胡鬼板心中』

            ゴミ捨て場から拾ってきた変てこな人形を「かわいい」を連発し可愛がる、年の離れた彼女に苦笑する男。
            深夜に耳慣れない声を聞き、目覚めた男の横で繰り広げられる光景は…『かっくん』

            自動車販売店のショールームで見かけた巨乳の女性に一目ぼれし、ストーカー紛いに彼女の後を付回すフリーターの男。
            ある日同じ駅で電車を降りた彼女に気付かれ、食事に誘われ有頂天になった男は、食事の途中で気を失い、意識を取り戻したときには、ベッドに縛り付けられていて…『乳房男』
            の9編から成る短編集。
             
            「笑顔が見たかっただけなんだ――。ただ、一緒にいたかったの――。きっかけは些細なことだった。自分だけは堕ちるはずがないと思っていた。しかし、いつしか夢想は妄想へと変貌し、熱烈な愛情は純粋な狂気に姿を変えた。欲望という脳内麻薬が炸裂するとき、人は想像を超えた行動に出る!鬼才が描く、心の壊れてゆく九つの風景。」だ、そうで。
            ♪閉じているから狂うんだ
             脳味噌を世の中に晒してみれば
             真っ赤に飛び散るぼくの血飛沫〜
            と、帯にはタイトルの続きのような歌詞(?)までも…。


            『かっくん』の可愛い挿画にすっかり騙されてしまった…。
            この馬鹿馬鹿しさ(シュールさかな?)は、かなりツボに嵌る(想像するとかなり怖いけど、何故か笑えてしまう)。
            夢に出てきそうなくらいに、嵌る。

            他にも『視線の快楽』と『好き好き大好き』のラストはすごく面白い。

            『ぼくらはみんな閉じている』と『乳房男』は、ちよっと汚い(私にはそっちの趣味はないので…)けど、インパクトはかなりなもので…。

            『ぼくらはみんな閉じている』の、大学生の辿り着いた理由に、思わず噴き出しそうになってしまった…。
            「たかが…」と思うけど、そういうのもありかなと思えてしまうのが、現代の世の恐ろしさというか。

            『乳房男』なんて、こういう生活したい男の人は実際たくさんいるような気がする。
            ある意味天国のようだし…。
            なるほど、究極に人を好きになると、こういう思いに至るのか…と、ちょっと感心してしまった。

            この作品も、まだこの作者にしたら壊れっぷりは物足りないそうで(何せ、「クライムノベルの最終兵器」と、どこかに書いてあったぐらいだし)、どんどん深みに嵌っていく私も、きっとどこか壊れてるんだろうなぁと思いつつ、次に読む小川さんの本を選んでたりする。

            黒い方の新堂さんも、そろそろ読まなければ…(やっぱり、壊れてるのかな…)。

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              『イヴの夜』小川勝己

              イヴの夜
              イヴの夜
              小川 勝己 2006年 光文社 P.309
              ★★★★★
               自分たちは、他者を憎み、恨み、妬み、嫉み、蔑み、貶め、拒絶し、愚弄し、嘲笑い、騙し、裏切り、傷つけてきた。心のなかで――ときには態度や言葉で、あるいは行動で。そしてそれらは、たいてい自分の脳内で都合よく変換され、捏造も加えられ、自己にとって肯定的なものへと変化していく。自分の心理的立場を被害者のそれへと変えてゆくことすらある。

              女性に対して免疫がなく、口下手で、さえない男、三沢は、人数合わせで連れて行かれた合コンで、同じくあまり乗り気でなさそうな地味な女性に、勇気を振り絞って声をかけたことから、付き合うことになり、彼女との、初めて一緒に過ごすクリスマス・イヴを楽しみにしていた。

              その矢先、彼女が何者かによって殺害されてしまい、悲嘆に暮れる三沢だが、彼女の友達の証言から、三沢は実はストーカーだったのではないかと疑われ、マスコミから、殺人事件の真犯人として追い回されるはめに。

              はじめのうちこそ、自分の手で犯人を探し出そうとしてみたものの、素人にはとうてい無理なことだと思い知らされ、自分でも、本当のことがわからなくなってしまう三沢は、せめて彼女がどんな人間だったのかを知りたいと願う。

              けれど誰も何も教えてはくれず、彼女にとって、自分は一体何だったのかと憂鬱になり、自分にかけられた嫌疑を払うことにも疲れてしまった三沢は、その地から逃げ出すことに…。

              そして辿り着いたホテルの一室で、電話で呼び出した女性と二人でクリスマス・イヴを迎えた三沢は、ささいな誤解から、相手の女性と諍いを起こしてしまい…。

              「孤独や絶望や喪失感を知る者だけが、かけがいのないものに気付くことができるのだろうか。コミュニケーション不全をテーマに描く著者が、追い詰められた果てとその向こう側を描く。『GIALLO』連載に加筆して単行本化。」だ、そう。


              まったくの予備知識なしに読んだ後で、この人の以前の作風を知ってちょっとびっくりした。
              「鬼畜系ノワール」と、評されていたけど、そちらにもかなり興味を惹かれてしまう。
              この本の装丁からは、想像できないけど…、これはこの人にとって、相当大人しい作品なのかな。

              登場人物は、確かに「こいつはアホか」と、思うような人物が二人ほど(いや、もっとかな)いたし、女の人もちょっと変わってたけど(クリスマスプレゼントに、変わったもの欲しがる人だな…とか、初めてのデートで、そんなあつかましい…とか、そんな程度の変さだけど)。

              スーパーの買い物でのシーンでも、「お金がなくて節約しないといけないときに、そんな物買うか」と、変なところが気になってしまった(確かに、一時期「あるある」だか「昼は○○」だかで、一躍有名になってたものだけど…何だかマニアック)。

              「コミュニケーション不全」がテーマとあったけど、確かに不器用というか、可哀相というか…、でも、こういう人、周りにいるなぁと思う。
              でも仕事に行く前に、そんな物食べるなよ…と、やっぱり性格そのものにも問題がありそうな…(だから、そうなるのか)。

              なんでクリスマス・イヴにそこまで拘るのか…まあ、そんな目に遭ったなら…と、思わなくもないけど、私にとっては、新年の一週間前、ぐらいの感覚しかないので、何の思い入れもない(これは、もしかして寂しいことなのかな?)。

              これ読んで、小川さんの、他の作品が堪らなく読みたくなったので、そのとっかかりとしては、この本は良い出会いだったのかも。
              何か嵌りそうな予感が…(知らないほうが良かった、と後悔しそうな気もしないでもない)。

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                読み終わった後も余韻に浸りたくなるような…これは、すごい。

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