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    『D−ブリッジ・テープ』沙藤一樹


    D‐ブリッジ・テープ
    沙藤 一樹 1998年 角川ホラー文庫 P.163
    ★★★★★
    「俺のことを知れ」
    「知るんだ」
    「俺の存在を知るんだ」
    「俺はここにいる」
    「俺は生きてたんだ!」
    「生きてたんだ」
    「一生懸命にな……」

    夢の橋を意味する、通称「D−ブリッジ」、正式名称「横浜ベイブリッジ」に不法投棄され、溢れたゴミの中で生活していたという、名もなき一人の少年。

    後に死体で発見された少年が大事そうに抱えていたテープレコーダーの中から、取り出された一本のカセットテープ。

    5,6歳の頃に、父親に連れて来られ、そのまま置き去りにされた少年の、精一杯生きた証の記録。

    少年の、最後の力をふりしぼった最初にして最後のメッセージを、塵も埃もない清潔な会議室で聴かされるのは、旧臨海区域開発計画に携わる大人たち。

    そして会議の席上で、わずか60分あまりのカセットテープがデッキにセットされ、少年の生々しいメッセージが再生される…。

    「近未来の横浜ベイブリッジは数多のゴミに溢れていた。その中から発見された少年の死体と一本のカセットテープ。そこには恐るべき内容が…斬新な表現手法と尖った感性が新たな地平を拓く野心的快作。第4回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。」だ、そうで。


    その頃、作者の沙藤さんは若干23歳ということで…凄い才能だなぁと感心する。
    逆に、大人になりきってしまってからでは、こういうの書けないんじゃないかなと…。

    設定が、近未来とあるけど、私が「夢の…」で思い浮かぶのは「夢の島」と名付けられた「ゴミの島」。
    それが、今はもうないことを初めて知って驚いた。

    なので、近未来の話というよりも、昔の話、もしくは現在の話なのかと思えてしまう(よその国には、実際ゴミの山の中で生活(?)している子供たちがいるというし)。
    つい最近も、虐待されて、犬小屋の上の棚みたいなところで生活していたという子供のニュースを見たばかりなので、何かますます現実味を帯びてるというか。

    信じられないとか、有り得ないとか…そういうことがなくなってきているようで、小説より現実の方が、最近は怖かったりする。

    ここに出てくる少年の生活は、生き延びるために、人間の本能として仕方ないのかな、というような残酷な場面が次々に出てくる(そ、それだけはやめて、と思ったけど、この子が「生きる」ことしか知らなくて、そうしたのなら仕方ないか…と、あくまでも「生きる」ための手段としてやむを得ないというか…)。

    ホラーとして読むなら、そこはグロいんだろうけど(まあ、それが狙いなのかもしれないけど)…それだけではない、人間のしぶとさというか、生への執着というか、それをたった5、6歳の子がやってのけなければならないというのが、何とも痛々しい。

    同じように捨てられた少女のために、少年が取る行動には思わず目を瞑りたくなってしまったけど、逆じゃなくて、良かったと…。
    この状況で、その心はどうやって育ったんだろうと不思議に思えたけど、それもまた人間の本能なのかもしれないと思いたい。

    テープを聴く大人たちの姿勢は、まあ、現実はこうなのかなという感じで。
    この人たちにとっては、名も知らぬ、自分とは無関係の少年の命なんて、「ゴミ」の一つでしかないのかもしれないなと思えてしまう。
    そんな人間には、誰が何を言っても通じないのが現実なのかなと。

    一つだけ気になったのは、10歳から13歳の少年の声のはずなのに、何か妙に喋り方が、おっさんくさかったような…。
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      『新宿ミルク工場』沙藤一樹

      新宿ミルク工場
      新宿ミルク工場
      沙藤 一樹 2004年 講談社 P.268
      ★★★★
      闇の中を歩きながら小さな声を出してみる。「わたしの声は届かない」その声は周囲の闇に吸い取られていくような気がする。「でも、それはいい。しかたないことだから。だけど、それなら他の人の声もわたしに届かないようにしてほしい」お互いに声が届かなかったら、痛みが減るかもしれない。淋しいけれど、痛みからは逃れられるかもしれない。                      〜『ミルク』より〜

      「人生はとても苦しく、死だけが安らぎをあたえてくれる。」
      そう結論を出して、一人の少女は自由に空を飛ぶための場所へ辿り着いた。
      屋上に佇む少女を見つけ、話しかけてきたのは少女より少し大人の、一人の女性。

      人を捜している途中だと話す女は、戸惑う少女をよそに、次々と質問を投げかける。

      知らぬ間に「SOS」を発していた自分に気づき、震える少女に、女性は「しばらくあんたのそばにいる」と宣言し、家には帰らないという少女に付き合い、そのビルの物置で一夜を過ごすことに…『ミルク』

      廃工場の片隅に隠れる少年を偶然見つけ出したのは、一人の青年。

      血を流し、怪我をしている様子の少年に驚き、手当てをし、人を捜している途中だからと、一度は立ち去った青年が再びその場所に戻ると、少年の怪我は先ほどよりひどくなっているようで…。

      何度も立ち去ろうとして、その場に引き止められてしまう青年に、少年は「そこに死体があり、ぼくが殺した」と言うのだが…『工場』

      そしてエピローグのような『新宿』の、3編から成る短編集。

      『わたしを救えるのはあなたのぬくもりだけ
      大人たちから逃れるには「死」しかないと追いつめられ、さまよっていた若い男女に訪れた偶然。ふたつの出会いがひとつにつながった時、「奇跡」が起きた―。
      日本ホラー小説大賞短編賞受賞作家が放つ渾身の書き下ろし小説
      絶望の果てに紡ぎ出された「魂の再生」の物語』だ、そう。


      「再生」の物語というか「救済」の物語というか…。
      この作品が出来上がった経緯というのをどこかで読んだけど、作者のHPが出来たばかりのころの掲示板に寄せられた声を元に作られたとか、なんとか。
      なるほど、なんとなく「真剣10代しゃべり場」のような雰囲気。

      最近良く聞くような悲惨な話ばかりだけど、実際にそれだけ、虐待や、そういうことで悩んでる子が多いということなのか。

      ここに出てくる女の子と男の子のように、誰かが側にいて、声をかけてくれさえすれば少しは救われるのかもしれないけど…。
      だけど、そのせいで他の誰かが犠牲になるというのは、何か納得いかないような。
      読み方が悪いのかな、どうも、そうとしか取れなかった。

      『工場』の少年の、「自分」との戦いは、何か『24人のビリー・ミリガン』や貴志さんの『ISOLA』を彷彿させるようで…壮絶で、しかも結構グロかったので、「ああ、この人はホラーの人だった」と思い出させてくれたというか…目の前にその光景がありありと浮かんできてしまった。

      でも、この本に書かれてる救いの言葉の数々は、結構、子供たちが言われたら嬉しい言葉なんだろうなと思う。
      「あんたには別の道もあるんだよ」
      の、一言でも。たぶん。

      何かこれ読んで、無性に尾崎豊が聞きたくなってしまった。
      「僕はいつでもここにいるから…」という歌詞に、「もう、いてないがな…」と心の中でいつもつっこんでしまうんだけど。

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        『不思議じゃない国のアリス』沙藤一樹

        不思議じゃない国のアリス
        不思議じゃない国のアリス
        沙藤 一樹 2003年 講談社 P.256
        ★★★★
        ぼくは空を眺めている。雲がないせいか、何もかもが止まって見える。またヘリコプターの飛ぶ音が聞こえている。ニセモノの先生がニセモノの教科書でニセモノのことを教える。ぼくの感じたところでは、どうやら、そういうことだったようだ。クラスの生徒たちもニセモノばかりといった感じだ。ニセモノたちに囲まれ、ぼくはひとりだ。
        〜『飛行熱』より〜

        中学時代の修学旅行先での事故以来、周囲の人間から「奇跡の少女」と呼ばれる田中由記子。
        地元の信用金庫で働き、今は平凡に暮らしている由記子は、20歳の頃に「アリス」と名乗る不思議な少女と出会い、彼女との会話に癒されていくのだが…『不思議じゃない国のアリス』

        青以外の色は全て灰色の世界に見えるという色覚異常の少年「ハル」と、研究室から逃げ出してきた少女「月子」。
        世界から切り離されたような空間で、出会い、二人きりで暮らしていた「ハル」と「月子」。
        タイムリミットが訪れ、書き置きを残し「ハル」の元を去っていった少女が再び「ハル」の前に現れたとき、彼女は全ての記憶を奪われてしまったかのように…『青い月』

        夢の中の少女から、「まわりの人間はみんなニセモノ」と聞かされ、ニセモノたちのいないところへ行くために、身の回りのものを鞄に詰めて家を飛び出した少年、哲也。
        人気のない、閉鎖されたスーパーマーケットで「ホンモノの人間」を待つ哲也が見たものは、「ホンモノの人間」に無残に殺された「ニセモノの人間」の姿。
        「ホンモノ」だと名乗る男の「ホンモノグループ」の仲間に入れてもらおうと、哲也は男の手伝いをすることに…『飛行熱』

        パソコンのオンラインゲーム上で知り合い、パーティーを組み、夜な夜な冒険を続ける少年、少女たち。
        参加者の一人である少女「ルミ」は、やがてゲームの枠を超え、仲間の一人に悩みを打ち明け、励まされた通りに行動しようとするのだが…『空中庭園』

        中学一年の夏休みに転校して以来、ずっと、ひとりぼっちでいた女の子の前に突如現れた、天使のような少女「アマリリ」。
        「アマリリ」は、クラスメイトたちに次々と銃を向けていく。
        やがて少女はその状態を受け容れ、「アマリリ」に指図するのだが…『銃器のアマリリ』

        そして、最後を締めくくるのに相応しいと思えた超短編『旅をする人』の、6編から成る短編集。

        「大人の理不尽な行為により絶望した少年・少女たちを描く5つの短編、衝撃の結末!!
        日本ホラー小説大賞短編賞受賞作家の新感覚ホラー・ミステリー!」乙一さんも大絶賛だそうな。


        なかなかの読後感。

        『不思議じゃない国のアリス』で、「アリス」が連れて歩く熊の置物「クドリャフカ」に喋らせたことは、真実その通りなんじゃないかと、耳が痛いというか…。
        私もそういう意味では、確かに罪人だと思う。
        誰かを「助けること」をしたことがこれまでにあったかどうかも、あやしいし。

        『青い月』は、人間のエゴというか、本質を見せられたような(例え、子供であったとしても)。
        『飛行熱』も、ブラザーとのやりとりは可笑しかったけど、最後に哲也が真実に気付いたとき、その悲惨な現実に心が痛む。
        『空中庭園』は、久しぶりにRPGを実際にやってるみたいな気分になれて、結構楽しかった(途中までは)。

        『銃器のアマリリ』は、すごくいい話なんじゃないかなと思えた。
        残酷な気もしたけど、自殺を考えるくらい辛いなら、これぐらいはしてもいいんじゃないかなと(あくまでも心の中だけで)…。

        「もし、あのとき、わたしが声をかけていたら、どうなってたんだろ…」
        何もしなかったことを後悔するのは、やって恥をかくよりも、嫌だなと思う(CMでもあったかな)。

        「アリス」の話は、かなり辛辣なことを言うし、悲惨な過去の話もあるけど、何となく関西弁に救われているようで。
        あとの話も、どこか間が抜けてるような部分があって、会話が結構可笑しくて…あまり暗くならなくて済んだのは、そういうところかな。

        「人間は二度死ぬ」という言葉を、最近サイバラさんの漫画の台詞で目にしたとこだけど、確かに、人から忘れ去られてしまうのは「死」に等しいのかもしれないな。
        大人はもう、それでもいいような気がするけど、子供にとってはかなり辛いことなんだろうなぁと思う。

        「アリス」みたいな少女が本当にいたら、絶対に忘れられそうにもないけど(熊、可愛いし)。
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