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    『いっぺんさん』朱川湊人

    いっぺんさん (いっぺんさん)
    いっぺんさん (いっぺんさん)
    朱川 湊人 2007/8/25発行 実業之日本社 P.293 ¥1,680
    ★★★★★
    きっとしーちゃんは、自分の病気が治ることなんて、これっぽっちも望まなかったのだ。家族が幸せになりますように――きっと、しーちゃんの最終的な願いは、白バイ警官でも早く大人になることでもなくて、その一事だったに違いない……
     しーちゃんは優しくって、バカだから。    〜『いっぺんさん』より〜

    三十年前、小学生だった「私」が祖母から教えてもらった、どんな願いでも一度だけなら必ず叶えてくれるという神様「いっぺんさん」。
    当時の「私」の親友、やることなすこと間が抜けたクラスの問題児、お調子者の「しーちゃん」の切実な願いを「いっぺんさん」に叶えてもらうために、遠く離れた村まで山を越え、自転車を走らせた「しーちゃん」と「私」。
    運良く「しーちゃん」の願いは神様に届いたようで、夢が叶えられると喜んだ矢先に「しーちゃん」が病気で倒れてしまい…『いっぺんさん』

    一家の大黒柱である父親が病に臥せり、貧乏な生活を強いられた子供の頃の「私」。
    幼い弟たちのために、どうしてもお金を必要としていた「私」に、仕事の手伝いをしないかと声をかけてくれたのは、近所に住む、戦争で片腕を失った「鳥使い」のおじさん。
    おじさんが仕事用に調教した「ヤマガラ」のなかでも「チュンスケ」は、特に利口で健気で働き者で…『小さなふしぎ』

    会社をリストラされ、彼女とも別れ、手に入れた中古のバイクで日本縦断の気ままなひとり旅に出た三十歳の「俺」。
    空腹を抱えて飛び込んだ小さな食堂で、その食べっぷりを見知らぬ女に見初められ、まるで桃源郷のような「若い女」しかいない村へと導かれるのだが…『逆井水』

    他、『コドモノクニ』、『蛇霊憑き』、『山から来るもの』、『磯幽霊』、『八十八姫』の、「ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド8編」から成る短編集。

    『願いは必ず叶う。
    ただし、いっぺんだけなぁ。
    田舎で出会った8つの不思議ストーリー
    「花まんま」の直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語。』だ、そうで。


    表題作の『いっぺんさん』は、もう堪らなく好きな話…。
    今年読んだ作品の中で、どれが一番好きかと聞かれたら、短編だとこれかも(長編だと、吉田さんの『悪人』)。
    とにかく、いっぺん読んでみてくださいとお願いしたくなるほど良い話(だと思う)。

    『コドモノクニ』は、説明しずらかったから書けなかったけど、昔話のタイトルがついた4つのお話からなっていて、それぞれの主人公の子供たちの、子供特有の恐れとか、怯えとか、愚かさとかがすごく良く描かれていて、最後がまた悲し…。

    『小さなふしぎ』も、動物ものに弱いので「チュンスケ」の健気さに涙し…。

    『逆井水』は、どこかで聞いたような話だけど、最後のオチが好きだし、『蛇霊憑き』も、これまた先が読めるけど、その場面を思い描くと怖くて堪らない(楳図かずおの「へび少女」好きとしても、堪らないかも)。

    『山から来るもの』は、救いがないというか、酷な話。

    『磯幽霊』も、怪談話なのかと思いきや、もっと恐ろしい現実の女の執念みたいな話で。

    『八十八姫』は、日本に伝わる忌まわしい風習に憤りを感じたけど、最後に大きな気持ちになれるというか、考え方を変えれば、それはそれで幸せなのかなと(それでも切なくて泣いてしまうんだけど…)。

    読み終わって、装丁の表と裏を見て思わず微笑んでしまったし、いつまでも心の片隅に「しーちゃん」を留めておきたくなるような、落ち込んだときに読み返したら、絶対元気が出ると思えるような、是非小学校の教科書に採用してもらいたいような『いっぺんさん』は、本当に素晴らしく良いお話。

    「いっぺん」だけ叶えてもらえる願いごとなら、できることなら自分のためじゃなく誰かのために使いたいと思える人でありたいなと(思うだけかもしれないけど)。

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      『水銀虫』朱川湊人

      水銀虫
      水銀虫
      朱川 湊人 2006年 集英社 P.261
      ★★★★★
       昔、人は生きている間に犯した罪に応じて、死後、さまざまな場所へ送られるのだと教えてくれたのは母だったろうか。
       人を殺した者、人を傷つけた者、嘘をついた者、他人を陥れた者……彼らの魂が平穏な世界に行けるはずはなく、いわゆる狠蝋瓩僕遒舛董永遠に罰を受け続けねばならない。自ら命を捨てることも、大きな大罪のひとつだ。

      預金を全て下ろし、会社を無断で欠勤し(これから、どうするか)と考えていた男は、狭苦しいコーヒーショップで一人の商売女らしき女と出会い、誘われるままに店を出て…小さな虫が、自分の動脈の内側を走り回っているような感覚に陥る『枯葉の日』

      突然の雨に降られ、アパートの軒先で雨宿りをしていた少年は、アパートの住人に呼ばれるがままに、部屋に上がらせてもらい暖を取り、思いもよらないもてなしを受け…何十、何百匹もの虫が頭の中で走り回っているような気がするという男に出会う『しぐれの日』

      「死神のような女」をナイフで刺してしまった高校生の自白…その時、何千何万もの小さな虫が、脳の中で一斉に蠢きだしたような気がした『はだれの日』

      不幸な事故で、孫を失ったばかりの友人の家に招かれた初老の女は、請われるままに可愛がっている孫を連れて訪ねて行き…足の速い甲虫が、神経の上をチョコチョコと走っているみたいな、それまで感じたことのない奇妙な気分に陥る『虎落の日』

      プロポーズを目前に控え、幸せの絶頂にあった「勝ち組」の女は、毎年現れる「クリスマスの怪物」を思い出し…腕から這い上がってきた小さな虫が、首筋にまで届くのを感じ、皮膚を掻き破りたい衝動に駆られる『薄氷の日』

      兄の車から持ち出したものを手に、山奥の秘密基地に向かう小学生たちは、途中で出会いたくないクラスメイトに出会ってしまい、仕方なく行動を共にし…足の速い甲虫のようなものが耳の穴から飛び込んで、頭の中心めがけて走っているような気になる『微熱の日』

      大学の図書館に勤める男は、病気の妻をもてあまし…首筋を這う小さな虫のようなものを摘み上げ…『病猫の日』の7編から成る短編集。

      「誰もが抱える水銀虫。彼らは人の心に寄生し、自殺へと導くのだ。読むほどに憂鬱になる、慰安と戦慄の七日間。
      ホラー界の新鋭による罪と罰。」だ、そう。


      人の魂の中に入り込んで、這いずり回り、やがて無数の穴をあけてしまうという架空の虫、「水銀虫」を想像するだけでも、思わず身体のあちこちが痒くなってしまう。

      この虫は、人間の良心を食らうのか、それとも良心の顕れなのか…。
      いずれにしても、虫嫌いの人なら発狂してしまいそうな(そこまでではないかな…)、おぞましさ。
      ぱっと見、表紙も虫の塊なのかと、虫が平気な私でも、多少びびりながら手にしたけど。

      それぞれにつけられたタイトルの「〜の日」という言葉の意味も、知らない言葉が多くて、意味を知って感心してしまった(感心するだけで、すぐ忘れてしまうんだけど…)。

      読んでいて引き込まれたのは、高校生の男の子が、自分の犯す罪の重さを十分に認識しながらも、そうせざるを得なかったという『はだれの日』。

      一番気持ち悪かったのは、自分の子供より可愛い存在の「孫」のために、ここまでしてしまうのか…と思った『虎落の日』。

      好きなのは、高飛車女の『薄氷の日』。
      そうなってくれないと、いたたまれないというか…、こうなればいいという願望かな。

      昨日は、しばらく餃子が食べられなくなると思ったけど、今日はハンバーグか…ミンチ系は、いろいろと混ざっててもわからなそうで…。
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        『赤々煉恋』朱川湊人


        赤々煉恋
        朱川 湊人 2006年 東京創元社 P.307
        ★★★★★
        たとえば友ダチでも会社の仲間でも、誰でもイイよ。明日、誰かに笑いかけてみなよ。
        こっちが笑いかけたら、きっとそのヒトも笑い返してくれるでしょ? ニッコリしてくれるでしょ?
        幸せなヒトは、それを当たり前だと思うだろうね。
        でも違う。
        それはすごく貴くて、素晴らしくて、美しいコトなんだ。それを当たり前と思えるヒトが、アタシは涙が出るほどうらやましい。                     〜『アタシの、いちばん、ほしいもの』より〜

        若くして病気で亡くなってしまった妹のために、姉である早苗の恋人が探し出してきてくれたのは、特別な遺体の記念写真を撮影してくれる「空倉葬儀」という葬儀会社。
        写真の出来上がり具合に満足していた早苗のもとに、妹を看取った病院の看護士がやって来て…『死体写真師』

        出会い系サイトで知り合った主婦にせがまれて、人気があるというM山町のホテルの一室に入った佐原。
        部屋の四隅に塩を盛る主婦から、雨の日になると、数年前にこの街で殺された女が帰ってくるのだと聞かされた佐原は、同級生だった、その殺された彼女のことを思い出し…『レイニー・エレーン』

        マンションの非常階段脇のツツジの植え込みの中や、学校の屋上の給水タンクの上が自分の居場所だという女子高生の樹里。
        樹里には人には見えない「虫男」が見え、「虫男」に貼り付かれた人間は、間もなく死んでしまうという。
        そんな樹里が、公園で出会った小さな女の子と仲良くなり…『アタシの、いちばん、ほしいもの』

        子供の頃からの悪癖のせいで、実家を離れ、不遇の人生を強いられた女性、Rは、Mという男性に拾われ、彼を心から愛し、彼の一番になりたいと望むのだが…『私はフランセス』

        父親の暴力から、かろうじて逃れながら生きていた少年は、食べ物を探してうろついている夜の公園で、一人の男と出会った。
        男の部屋に足を踏み入れた少年は、その部屋で男が育てているという「月星人」の瞳に惹かれ、たびたび部屋を訪れ、いつか自分のものに、と思い始めるのだが…『いつか、静かの海に』


        「赤々とした実のように何かに身を焦がし、切望する者たちの行く末は――。
        そんな五人の様々な愛の形を巧みな文章で書き綴った、直木賞作家・朱川湊人の新機軸。
        切なさと悲しさ溢れる連作短編集。」だ、そう。


        結構ぞわぞわしてしまった。
        『死体写真師』の、主人公の恋人の趣味も、『アタシの、いちばん、ほしいもの』の「虫男」も、『わたしはフランセス』の主人公の語りも…、足元から虫が這い上がってくるようなおぞましさというか。
        でも、嫌いじゃない「ぞわぞわ感」。

        「エリートOL殺人事件」が、こんなところにも…あれは、かなり創作意欲を掻き立てられるような事件なんだな…。

        『私はフランセス』の話は、何となく主人公の気持ちが分かるので、おぞましいけど好きかも。これも実在の人物をモチーフにしてたのか…(まったく知らなかったので調べてみた)。
        彼女の写真は、確かに美しくて、人を惹きつける力があると思える。
        冒頭の主人公の行為に?と思ったけど、途中でなんとなく理解して、感心してしまった。

        『アタシの、いちばん、ほしいもの』も、最後に「あぁ」と思わせられて、この中で一番好きかも。
        彼女のほしいものが、私にも、本当に大切なものだと思える。

        「虫男」の見た目は、あまりに怖くて、夢に出てきてうなされそうな…。

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          『都市伝説セピア』朱川湊人

          都市伝説セピア
          都市伝説セピア
          朱川 湊人 2006年 文春文庫 P.291
          ★★★★★
          生きていることの意味なんてわからないし、人生の仕組みもわからない。けれど、ただ一つだけわかったことがある。死はまるで駄菓子屋のくじ引きのように、ある日突然当たってしまうものだと。……
           だから今、言わなくてはならない。伝えなくてはならない。愛する人に、愛していると。                    〜『昨日公園』より〜

          二十五年前の夏、精神を病み、祖父の家に預けられた、十六歳の頃の「私」の記憶。
          従兄弟と出かけた神社の夏祭りで、見知らぬ少女に声を掛けられ、連れて行かれた場所で「私」が見たものは、大きな冷蔵庫の中に入れられた、チョコレート色に染まったグロテスクな見世物『河童の氷漬け』。
          作り物に違いないと思いながらも、あることを確かめたくて、翌日もう一度その場所へ行ってみることに…『アイスマン』

          不思議な噂のある公園で、幼い息子と遊びながら三十数年前に見殺しにした友達のことを思い出す「パパ」の記憶。
          遠い秋の日、小学生だった遠藤は、この公園でキャッチボールをして遊んだ帰り道、悪友の「マチ」がタクシーに撥ねられたことを、晩御飯の後、電話で知らされ愕然とする。
          その翌日、公園の前を通りかかると、見覚えのあるボールが転がってきて、慌てて公園の中へ入ってみると、そこには「マチ」が昨日と同じように…『昨日公園』

          子供の頃、伝説となった知り合いの少年のように、都市伝説の主人公になりたくて、自らネットで噂を作り上げ、「フクロウ男」になりすました男。
          一度の殺人に味を占め、再び男は「フクロウ男」として殺人を犯すため、よその町で別人になりすまし、そこである男と出会い…『フクロウ男』

          物体と化した肉体を執拗に描き続けることで知名度を高めた女流画家、鼎凛子。
          山奥にある彼女の自宅を訪れたフリーライターのインタビューに答えるように、凛子は自分が死体の絵ばかり描くきっかけとなった、たった一度きりの激しい恋の話を始めるのだが…『死者恋』

          朝の通勤電車で、ある日、車窓の風景の中に、自分がリストラのリストに載せた男の姿を見つけ、愕然とする藤田。
          どんなに見ないようにしていても、その場所に来ると見ずにはおられない、そのマンションの窓辺で、次に藤田が見たのは四年前、孤独死させてしまった自分の母親の姿。
          罪の意識に苛まれ、ことの真相をつきとめようと、そのベランダのあるマンションの部屋を訪れた藤田が見たものは…『月の石』
          の、5篇から成る短篇集。

          「都市伝説に憑りつかれ、自らその主人公になろうとする男の狂気を描く、オール読物推理小説新人賞受賞作『フクロウ男』ほか、病む心の妖しさ哀しさを描くホラー短篇全5篇を収録。」だ、そうな。


          数年前、角川ホラー文庫ばかりを読み漁っていた頃、朱川さんの『白い部屋で月の歌を』(第10回日本ホラー小説大賞短篇賞受賞作)を読んだけど、なんとなくその妖しい世界観についていけなくて、それ以来読んでなかったことを後悔した…。

          年代的に、ここに出てくる主人公たちの過去と重なるから(「お兄さん布施明に似てるから…」とか、麻丘めぐみ似だとか、万博とか…)、ものすごくノスタルジックな気分に浸れてしまう。

          懐かしさも、妖しさも、最後に訪れるぞくぞく感も、何もかもが秀逸。

          『昨日公園』を読み始めてすぐに、「あれ?これ最近聞いた話…」と、思ったら、この前の『世にも奇妙な物語』の中で、光一君がやってたやつなのか…と気付いて、すごく得した気分になってしまった。

          どれもこれも、本当にラストが凄く怖くて面白い(鳥肌立つぐらい)。
          『月の石』の最後には少し、救われたかも。

          『花まんま』で、133回の直木賞を受賞されたようだけど、本作も、直木賞候補作だったのね…納得。
          最近本屋さんで見かけた最新作の『水銀虫』も、すごく読みたくなってしまった。

          タイトルの『都市伝説セピア』は、『一世風靡セピア』とは、関係ないのかな?
          これもまた懐かしい…。


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