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    『優しい音楽』瀬尾まいこ

    優しい音楽
    優しい音楽
    瀬尾 まいこ 2005/4/30 発行 双葉社 P.194 ¥1,260
    ★★★★★
    当然のように手を繋いで、人目さえなければ、タケル君のどこにでも自由にキスができる。そういうことがこんなにも気持ちよいことだとは思いもしなかった。
    「こうしているときが一番幸せ」
    タケル君と手を繋いでいるとそう思う。……
    〜『優しい音楽』より〜

    ある朝突然、見知らぬかわいい女の子からキラキラとした瞳でじっと見つめられ、思わず声をかけてしまった僕。
    最初はキャッチセールスか、はたまた宗教の勧誘かと訝しがる僕と、しぶしぶながらも、恋人として付き合うようになった女子大生の千波。
    ようやく招かれた彼女の家で、彼女が僕に近づいた理由が分かってしまった僕は…『優しい音楽』

    不倫相手の平太が妻と旅行をしている間、一人娘の佐菜を押し付けられてしまった深雪。
    思いの外躾の行き届いた妻似の佐菜の、子供らしくない態度に感心し、置いてけぼりにされた憂さ晴らしに「豪遊しよう」と誘う深雪に、佐菜がどうしても行きたい場所があると言い出し、二人が向かったのは、佐菜のおじいちゃんの家、つまりそこは不倫相手の平太の実家で…『タイムラグ』

    マンネリ化した同棲生活を送っていた章太郎とはな子。
    好奇心旺盛で、ガラクタを集めてきては部屋を無秩序に飾り立ててしまうはな子が、今回、特別おかしなものを拾ってきた…『がらくた効果』

    「受けとめきれない現実。止まってしまった時間――。だけど少しだけ、がんばればいい。きっとまた、スタートできる。家族、恋人たちの温かなつながりが心にまっすぐ届いてしみわたる。希望に満ちた3編を収録。『小説推理』掲載。」だ、そうで。


    優しい…みんな何て良い人たちばっかりなんだ…。
    そして正直だし。

    『優しい音楽』の千波の、出会った頃のタケル君に対する複雑な気持ちと、付き合いだしてからの本当に幸せな気持ちが、すごく面白いなぁと。

    恋人って、本当に何て特別な存在なんだろうと改めて感じさせられてしまった(そこに薬塗るって…確かにそれって親や兄弟には出来なくても、彼氏ならできることなのも…)。

    痴漢に触られたら「殺してやる〜」と思うのに、彼氏になら同じことされてもいいという当たり前のようなことが、前から不思議で仕方なかったけど、そういうの良く描かれていて、なんだかこそばゆくなるというか。

    そして千波の家族と、自分自身のために、一生懸命にがんばれる、タケル君みたいな人と結婚できたら、きっと幸せがずーっと続くんだろうなと。

    『タイムラグ』も素敵な話だけど、これから深雪さんは、平太とこれまで通り付き合っていけるのかどうか…、気持ち的にどうなんだろう…と。

    『がらくた効果』は、拾ってきたもののインパクトの強さに思わず吹き出してしまったし、はな子のおおらかさと、章太郎のオトボケぶりが良くて、これもまたお似合いの二人だなと。

    何かそんな風に安心しきって全てを任せられる相手がいるって、本当に幸せなことなんだなと、つくづく考えさせられてしまうというか、羨ましいというか。
    恋の力の偉大さを思い知らされてしまった…。
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      『図書館の神様』瀬尾まいこ

      図書館の神様
      図書館の神様
      瀬尾 まいこ 2003年 マガジンハウス P.165
      ★★★★★
      本当は初めからよくわかっている。私は確実に誰かを裏切っていて、自分をお座なりにしていて、ただ、浅見さんと一緒にいる心地よさに甘んじているだけだ。だけど、それだけでもない。そこには考えてもわからない、どれだけ考えても仕方のないことが存在している。きっと、それが私を引き留めている。

      名前の通り、清く正しく、どんなことにも真剣に取り組み、全力で臨んでいた18歳までの清(きよ)。

      中でも高校生の頃の清が、一番時間を費やし、誠実に打ち込み、清の全てでもあったバレーボール。

      高校生活最期の試合の後、清の厳しいひと言でチームメートを追い詰めてしまったことから、大好きだったバレーボールができなくなってしまった清は、生まれ育った町を離れ、再びバレーボールに触れるために、教職を取り、バレーボール部の顧問になることを願う。

      ところが国語講師として赴任した鄙びた田舎町の中学校で、清に任されたのは、部員がたった一人だけの「文芸部」…。

      安直な理由から「国語」の教師になることを選んだ清は、実は文学には全く興味はなく、授業にも部活にも身が入らず、不倫相手との逢瀬に身をゆだね、そして月に一度の墓参りを欠かせず…欠落した日々を、ただやり過ごすだけの毎日。

      そんな、バレーボールに全てを捧げ、文芸部を運動部と比べてつまらない部活と決め付けていた清が、文芸部のたった一人の部員であり、部長である垣内君と図書室で二人きりで過ごし、垣内君の言葉に耳を傾けるうちに次第に文学の面白さに目覚めていき…。

      “この出会いは、
      神様のはからいとしか思えない!
      『卵の緒』で鮮烈デビューした「坊っちゃん文学賞」作家による、爽やかな青春物語。”だ、そうで…これまた「魂の再生」の物語なのかな。


      「正しいことが全てじゃない」と言う、清の弟「拓実」の台詞に激しく同意。
      高校生の頃の厳しすぎる清の性格も分からなくもないけど、やっぱり「思いやり」のなさにちょっとひいてしまう。
      「強さ」と「正しさ」は全くの別物なのだなと…。

      それにひきかえ、清から見れば軟弱そうな弟、拓実君や、運動部じゃないというだけで最初軽んじられる垣内君の、何と「強い」ことか。

      瀬尾さんの描く「少年」や「青年」は本当にみんな優しくて、みんな大好きになってしまう。

      これまで私が見てこなかった、人間の真の大切な部分に気付かせてくれるというか…私の恋愛観とか価値観を一気に覆されてしまうほど、瀬尾さんの本に出てくる男の子たちは、人としても素晴らしいし、まさに神様のようで(不倫相手のおじさんは大嫌いだけど)。

      に、しても清の名前の由来が何ともユニークで羨ましい。
      私も子供ができたら、そんな名前つけてしまうかも。

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        『卵の緒』瀬尾まいこ

        卵の緒
        卵の緒
        瀬尾 まいこ 2002年 マガジンハウス P.191
        ★★★★★
        「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ。他に何がいる? それで十分でしょ?」
        〜『卵の緒』より〜

        小さいころから「父さん」のことは口にしない方が良いのだと悟っていた、母さんと二人きりで暮らす小学4年生の育生。

        自分は捨て子なのかもしれないという疑惑を長年抱いていた育生が、母さんとの繋がりの証拠である「へその緒」を見たいと言っても、母さんからは軽くかわされ…。

        そんな母さんが最近毎日のように育生に話すのは、同じ職場の「朝ちゃん」のことばかり。
        そしてある夜、晩御飯の途中で突然母さんが「朝ちゃん」を呼びたいと言い出して…『卵の緒』

        父さんの愛人の子供を、母さんが引き取ると言い出し、小学6年生の七生と一緒に暮らすことになった、高校3年生の七子。

        七子は、素直で朗らかで、大人から気に入られる術を身につけたような、良く出来た弟、七生のことをどうしても可愛いと思えず、受け入れられないでいる。

        ところが、七生を引き取って5日目にして、母さんが入院することになり、七子と七生、二人きりの生活が始まり…『7’s blood』

        「捨て子だと思っている小学校4年生の育生、妙ちきりんな母親、そのとぼけたボーイフレンド、不登校の同級生、血の繋がらない親子を軸に、「家族」を軽やかなタッチで描く。坊ちゃん文学賞大賞受賞作に書き下ろし1編を収録。」だ、そうで。
        この『卵の緒』が、瀬尾さんのデビュー作なのですね。


        瀬尾さんの本はときどき、読んでる途中に、突然後ろから鈍器か何かで頭を思い切り叩かれてしまうような、そんな感じがしてしまう…。

        乗り越えなきゃいけない壁が厚すぎるというか、甘くない現実というか。
        でも私は、そこに惹かれるのかな。

        『卵の緒』のお母さんは、私が母親なら、こうなりたいと思えるような人物で、こんな風に子供と向き合えれば良いなと思える。

        突然不登校になってしまった、育生のクラスメイトの池内君の台詞が泣かせるし、何より「朝ちゃん」の提案で始めた疑似体験には感心させられてしまう。

        色んな意味で、こんな教え方があるのか…と、是非世のお母さんたちにも実践してもらいたいような。

        ある出来事がきっかけで、猫を神様のようにあがめる、猫マニアのお祖父ちゃんもツボに嵌ってしまった。

        もう一つの『7’s  blood』は、これまで読んだ中で一、二番目に好きかも。
        何となく、足ツボマッサージのように、堪らなく痛いけど効く、というか。

        七子の心ないひと言に、「子どもだからだよ」と答える七生の、それまでの生活を想像してしまうと、あまりにも可哀相で…。

        水商売をしていた七生の母親が、七生に伝授したという「ほんの少し気合いを入れて、鳥肌立ちそうな言葉を吐くって大切なのよ。そういう言葉が人付き合いを円滑にしていくの」は、全くその通りで…でも、そういうこと言う自分が嫌で、時々空しくなったりしてしまうんだけど…確かに人間関係には必要なことだなと。

        「あとがき」を読んで、さらに瀬尾さんが好きになってしまった(私も、親しくない人と食事をするのが何よりの苦痛だったりするし…)。
        これからも、さまざまな繋がり方で、愛に満ち満ちた家族の形を描いてほしいなと、ものすごく期待してしまう。
        家族の形なんて、それこそ人の数だけありそうなので。

        育生の母さんの言う「自分が好きな人が誰か見分けるとても簡単な方法」…。
        私は、外で美味しいお刺身を食べると、「ああ、これを家の猫さんたちに…」と思ってしまうので、これはかなり当たってるなと…。

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          『幸福な食卓』瀬尾まいこ

          幸福な食卓
          幸福な食卓
          瀬尾 まいこ 2006年 講談社 P.231
          ★★★★
          翌日もまた朝がやってきた。本当に不思議だ。どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく。父さんが自殺を失敗したときも、母さんが家を出たときも、朝は普通にやってきた。

          どんな朝でも、必ず家族全員が顔を揃える中原家の朝の食卓。
          母さんの横には父さん、そしてその向かいには兄の「直ちゃん」と「私」佐和子。

          一年前、母さんが家を出ると宣言し、居なくなった今も、その習慣は変わらず続けられ、佐和子の春休み最後の日、3人が揃った中原家の朝の食卓で、今度は父さんが、父さんを辞めると言い出した…。
          教師の仕事を辞め、大学を受けなおすと言う父さんの発言に、直ちゃんが「何とかなる」と言うので、「だったら…」と、すんなり受け入れることにした佐和子。
          佐和子、中学二年の新学期から、辛い過去が蘇り体調に異変をきたす梅雨の頃…『幸福な食卓』

          佐和子が敬愛する、兄の「直ちゃん」。
          顔も性格も、運動神経も良く、何より秀才だった直ちゃんの欠点は、音感が全くないこと、そして恋人が出来ても三ヶ月と続かずに失恋ばかり繰り返すこと。
          何度失恋しても、三日もすればけろりと忘れてしまう直ちゃんが、今回家に連れて来たのは、外見からして、今までで最悪の第一印象の「小林ヨシコ」。
          そして佐和子自身にも「大浦君」との運命の出会いが訪れる、塾に通い始めた、中学三年の春…『バイブル』

          朝からステーキを佐和子に勧める直ちゃんが言い出したのは、今さらながら…家族の役割を放棄してしまった中原家をどうするか、ということ。
          高校生になった佐和子は、クジで学級委員に選ばれてしまい、クラスを上手くまとめられず、頑張ろうとすればする程クラスから浮き始め…佐和子、高校一年の春から梅雨までの悩める日々…『救世主』

          クリスマスが近づいた11月の終わり、彼氏の大浦君が「アルバイトをして、すごいプレゼントをする」と宣言し、その翌日から早速、佐和子の家の近所で新聞配達を始めた。
          直ちゃんは、可愛がっているニワトリの中から一羽を選び、ヨシコにプレゼントするらしく、ヨシコは、直ちゃんの留守に部屋を物色し、ここにないものをプレゼントすると言い、佐和子は、プレゼント用の毛糸を母さんと一緒に選び、みんながクリスマスを楽しみにしていた、その日の朝…『プレゼントの効用』

          「第26回吉川英治文学新人賞受賞作 珠玉の才能が生んだありえない感動!」だ、そう。
          ありえなくはないと思うけど…。


          「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
          のっけから、父さんの爆弾発言で始まる中原家の朝の食卓の風景は、朝からそんな…だけど、まあ朝しか全員が揃わないというので、それも仕方ないのか…。

          一緒に住んでいて「父さん」を辞めるのはかなり難しそうだけど、そもそも「父さん」の役割って、何だろう?はたと考えてしまった。
          父さんの遺書に書いてあった、長生きの秘訣(?)「真剣ささえ捨てることができたら、困難は軽減できたのに…」は、全くもってその通りだと(伝説の(?)ロックバンド、アナーキーの『3・3・3』の歌詞「そんなに真面目に生きてもしょうがない」を座右の銘にして生きてきた私には、ものすごく納得できてしまうお言葉のような…)。

          母さんが居なくなった理由は…、母さんは本当に父さんを愛しているんだと思えるし、(好きすぎて…かな)だからこその、この選択は、とても正しいことのように思うし、世間一般の家族の形態からすれば、少しずれてるのかもしれないけど、こういうのも全然ありだと思う(昔から、結婚するなら、別居結婚がしたいと思っていたのでなおさら、そう思うのかもしれないけど…)。

          母さんが家を出て、父さんは父さんを辞め、兄は兄で、大学に進むことを辞め、農業という道を選択し、みんながみんな、自分勝手なことをしているようでいても「家族」であることには変わりなくて…。

          ヨシコさんの最後の励ましの言葉は、当たり前のことだけど、何だかとても良くわかるし、「直ちゃん」にはこの人しかいないと思えた(たとえ使いまわしの油セットでも、手ぶらで行けないヨシコさんは、とても常識のある人のように思えるんだけど…)。

          佐和子がみんなを突き放しても、みんなは決して佐和子を見捨てたりしないし、佐和子が気付いてないだけで、みんなからすごく愛されていて…それは佐和子自身が愛されるべき人間だからで…。

          この物語に出てくる人は、みんなすごく良い人だけど、なかでも、大浦君が本当にもう、めちゃくちゃ素晴らしい。
          単純明快な性格も、少々ずれてそうなとこも…、この子は佐和子の神様なんじゃないのか?と、途中で思ってしまうほど、大きな愛で包んでくれるというか…。

          そんな年頃なら普通「照れ」とかありそうなのに、ストレートですごく気持ちが良い。
          こんな人が現実にいたら、絶対掴んで離さない、と思う。
          最初にこんな子と付き合ってしまったら、もう二度と他の人好きになれないのでは?と、私なんかは思えてしまったけど。

          なので…少し瀬尾さんを恨んでしまいそう。

          しかも、その役、映画では勝地君が演じるというので、それだけで映画も観に行きたくなってしまった。
          折しも今日、勝地君の話題が職場で出て「勝地君て、松村雄基の若いころに似てへん?」と聞いたら「それ誰ですか」と、若い子に言われてしまったところで…。
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            『強運の持ち主』瀬尾まいこ

            強運の持ち主
            強運の持ち主
            瀬尾 まいこ 2006年 文藝春秋 P.224
            ★★★★★
            三千円も出して占い師に聞かなくても、自分で本を買えばいいのに。……
            「三千円の価値をどうつけるかはあなたしだいよ。大事なのは正しく占うことじゃなくて、相手の背中を押すことだから。まあ、そのうち、あなたにもわかるはずよ」とジュリエ青柳は不思議がる私に言った。

            上司との折り合いが悪く、短大を卒業して就職した会社を半年で辞め、特別興味があったわけでもなく、一人でできる気楽さから、「ジュリエ数術研究所」のドアを叩き、「ルイーズ吉田」として占い師の仕事に就いた、本名、吉田幸子。

            面倒臭い計算が苦手で、殆どが直感に頼っているというものの、「ルイーズ吉田」の占いは、結構当たると評判になり、ショッピングセンターの二階の奥のスペースを借り、独り立ちして一年が経った頃…。

            クリームシチューが恋しくなる、そこそこ寒い二月の終わり。
            八割方、恋愛に関する問題が占めるなか、その日「ルイーズ吉田」の前に現れた小学生の男の子は、二つのスーパーのうち、どちらに行けば良いのか占って欲しいと言い出した。
            占いの結果に気を良くした男の子は、一週間後にまたやって来て…『ニベア』

            いつにも増して恋愛相談が増える九月の初め。
            よくいるタイプの女子高生は「彼を振り向かせるにはどうしたらいいか…」と、ありがちな相談にやって来た。
            「ルイーズ吉田」のアドバイスはことごとくはずれてしまうというのに、女子高生は何度も懲りずに占ってほしいと現れる…『ファミリーセンター』

            空気の乾燥し始めた十一月。
            「ルイーズ吉田」の占いを傍で聞き、「田舎の診療所の医者みたい」と近づいてきたのは、関西弁で喋る大学生。
            自分には「物事の結末がわかってしまうんや」という武田平助は、その能力を活かすため「ルイーズ吉田」のアシスタントとして、占いの勉強をしたいと言い出し…『おしまい予言』

            まだまだ寒さの残る三月。
            ひと月前からアシスタントとして働き出した竹子さんに、一人で占いを任せることにしたものの、生真面目でストレートな竹子さんの占いにはらはらする「ルイーズ吉田」。
            あまりにも不幸な人ばかりを相手にすることに気が滅入るという竹子に「ルイーズ吉田」が見てもらうことにしたのは、強運の持ち主であるはずの人物。
            ところが竹子の占いの意外な結果に、「ルイーズ吉田」までもが振り回されることに…『強運の持ち主』の、4編から成る連作短篇集。

            『元OLの占い師、ルイーズ吉田は大忙し!
            「がんばって。きっといいことがあるわ」
            読んだら元気が出る、待望の新作(2006年5月時点での)』だそう。


            これまで読んだ瀬尾さんのよりも、幾分軽めで、ただ面白く、さくさくと読めたという感じ。
            前半の、会社を辞めてから占いの研修を経て、独自の占いを編み出すまでの過程は、すごく納得してしまった(実は、私も真剣に占い師になろうと思っていたので、なかなか為になるというか…)。

            登場人物もなかなか個性的で、「ルイーズ吉田」が少々汚い手を使ってものにしたという、独創的な料理を作るぼーっとした彼氏も、もらったものは例え八丁味噌でも、全部その場で食べつくしてしまうと言う、頼りになる師匠の「ジュリエ青柳」も、社員食堂のうどんに拘る武田君(「おあげさん」と、「揚げ」に「お」と「さん」までつけて呼ぶのは京都だけなのかな?)も、子供の意見を何よりも優先する竹子さんも、みんなすごく面白い。

            それぞれの短篇の占いの中身は、暖かくて、読んでいて「ほっ」とするものばかり。
            「ニベア」も「ファミリーセンター」も、馴染みのものだし。

            今思えば、私は、男の人と別れる度に占いに足を運んでいたので、一種のカウンセリングとして占いを利用していたのかも。

            なので「別に終わりになることがだめなことじゃないじゃない。終わったら、また次にいいことが待ってるかもしれないし。進めるいい機会になるでしょう。」という台詞のような言葉をいただくと、すごく嬉しかったような記憶が…(別れてすぐの占いで、「次の彼氏はいつできますか?」と聞いて、占い師さんにマジギレされたこともあったけど)。

            京都で、よく当たると評判の占い師さんの元に、ひと通り行ってみて(馬鹿高いとこ以外)、どこに行っても「29歳で結婚する」と言われたけど、一体その歳に何があったのかさえも忘れてしまった。
            唯一、木屋町の街頭の占い師さんだけが「結婚はできない。愛人になる相」ときっぱり言ってたけど、愛人にすらなれてないし…。

            占いとは、その時その時の慰めであって、本当に師匠の「ジュリエ青柳」の言う通り「背中を押してくれる」ところなのだとつくづく思う。

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              『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

              天国はまだ遠く
              天国はまだ遠く
              瀬尾 まいこ 2004年 新潮社 P.169
              ★★★★★
              もう進むしかないのだ。大丈夫。死んだって何もない。天国も地獄もない。闇も苦痛もない。何も考えることもない。死んだらそこで終わり。全てを終えることができるのだ。他には方法がない。もう、これ以上あの日々を続けることには耐えられない。これを飲めば、あの日々から解放されるのだ。それを思えば、死ぬことなんて怖くないはずだ。

              中学の修学旅行の時に祖父からもらった、お気に入りの大きな鞄に、今日一日だけ必要なものを詰め込んで、全ての貯金を解約し、部屋をきれいに片付けて、二度と戻るつもりのない部屋を後にした千鶴。

              千鶴が死に場所に選んだのは、以前に一度訪れ、その空と海の、あまりの暗さに度肝を抜かれたと言う、日本海地方。

              北へ向かう特急電車で終着駅に降り立ち、タクシーに乗り込み、さらに「北へ」とだけ告げ、周囲は田畑ばかりの、山奥の集落にある「民宿たむら」に辿り着いた千鶴。

              以前に客が来たのが二年前、という寂れた宿に、ひとまず落ち着き、恋人に最後のメールを送信し、薬を大量に飲み、千鶴は二度と目覚めるはずのない最後の眠りにつくのだが…。

              「誰も私を知らない遠い場所へ―そして、そこで終わりにする。…はずだったけど、たどり着いた山奥の民宿で、自分の中の何かが変わった。あなたの心にじんわりしみる気鋭の作家の最新長篇(2004年時点での)。」だ、そう。


              作家さんとの相性、というのもあるのかもしれないけど、瀬尾さんの本は二作目にして、何だか虜になってしまいそうな。

              一言で言ってしまえば、死んでしまおうと、一人で誰も知らない土地に向かい、そこでの暮らしに触れて、もう一度生きてみようと考え直すという、オーソドックスな「再生の物語」なんだけど、その過程が、すごく好きな感じ。

              「民宿たむら」の、田村さんは、女一人でこんな宿に泊まったら、きっと惚れてしまうだろう…と、思う(私だけかな?)ような人物で、好きにならずにいられないというか。

              なので、千鶴が羨ましかったりする(できれば、その時間を譲ってもらいたいぐらい)。
              二人の会話に、何度も爆笑してしまった。

              まあ、「吉幾三ベスト」にやられてしまっただけなのかもしれないけど…(「雪国」には、心痛む思い出があるので、すっかりツボにはまってしまった。演歌ばかり聴いてた20歳ぐらいの自分が今では信じられないけど…)。

              田村さんを見てて、これまた昔大好きだった、ひかわきょうこさんの漫画「千津美と藤臣君」シリーズの藤臣君を思い出してしまった…。

              八代亜紀の歌に対抗するわけじゃないけど「男は無口なほうがいい…」と、この本を読んで、心の底からそう思ってしまった。

              最近文庫化されたのはこちら
                   ↓
              天国はまだ遠く
              天国はまだ遠く
              瀬尾 まいこ
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                『温室デイズ』瀬尾まいこ

                温室デイズ
                温室デイズ
                瀬尾 まいこ 2006年 角川書店 P.203
                ★★★★★
                正しいことができない苦しさ、だらけきったどんよりした空気、立て直す時のもどかしさ。もうあんな日々は送りたくない。誰かを傷つけたり、仲間を追い込んでしまう後味の悪さ。もうあんな気持ちは味わいたくない。

                中学三年の二学期から徐々に壊れ始めた「みちる」たちの学校。
                音楽教室の窓ガラスが割られたことを合図に、学校の崩壊は一気に加速していく。

                トイレで煙草の吸い殻が発見される。
                授業中にも構わず、教室を出て行く生徒が目立つ。
                廊下の落書き。
                歯止めのきかないけんか。
                増えていく遅刻者の数…。

                小学校6年生の頃、既に学級崩壊を経験していた「みちる」は、学校がこのまま崩れていくのを誰よりも不安に思い、元に戻すことは無理でも、せめて自分のクラスだけでも、崩壊を食い止めようと、HRで、ある提案をする。

                小学6年の頃の、いじめの標的とされた「優子」には、その提案が元で、「みちる」が皆の標的にされることが分かっていながら、一度言い出したら聞かない「みちる」を止めることができなかった。

                そして次の日から、学級全体による「みちる」への、壮絶ないじめが始まった。
                ただ一人の理解者「優子」は、いじめられる「みちる」を見続けることも、救うこともできず「もうこんな場所にはいられない」と、教室にいることをやめてしまう。

                本当の一人ぼっちになってしまった「みちる」への陰湿ないじめは、飽きることなく続けられ…。

                「ひりひりと痛くて、じんじんと心に沁みる。『幸福な食卓』の気鋭が贈る、とびきりの青春小説!ふたりの少女が起こした、優しい奇跡。」だ、そうな。


                瀬尾さんは、実際に中学校の先生らしいので、ここに書いてあるのは、現実に起こっていることなんだな…と思うと、空恐ろしい。

                幼い頃から「空手」を習い、クラスでみんなからひびられる存在の伊佐と仲が良いこともあり、小学生の頃は、いじめの標的からはずされ、どちらかといえば皆から好かれていたはずの「みちる」でも、中学校ではそんなものは通用せず…というのも、リアルだなぁと思う。

                早々に教室から退散し「相談室」に通うようになった「優子」の気持ちも良く分かる。
                どんなにいじめられても、学校へ行くのが辛くなっても、逃げない「みちる」の強さは、私には驚異的。

                私だって「優子」と同じように、「相談室」行きを勧めてしまうと思う。

                なので、集団の中にいるのに、一日中誰とも口を聞いてもらえず(例外が二人だけいるんだけど)、暴力を振るわれ、持ち物を隠されて、お弁当を捨てられて…そんな目に遭っても、休まずに学校に行き続ける「みちる」を見ているのは本当に辛かったし、心が痛くなってしまった。

                「優子」の考えた学校の立て直しも、なかなかユニークというか…もう少し時間がかかりそうだけど、この人はこの人で、また、強いなと思う。
                「みちる」よりも、大人なのかもしれないとも思う。

                全然駄目なのは、先生達。
                口の端から血を流しているのに「頭でも痛いのか」は、あまりにも無責任すぎる。
                スクールサポーターの吉川も、いまいち頼りないし。
                吉川の言うように、どうせなら「アントニオ猪木」や「大仁田厚」ばりの人物を雇った方が良いような気が…。

                この本は、学校の先生達に読んでもらいたいなぁと思う。
                装丁だけ見てると、とても「のほほん」としてそうなのに、中身は重い。

                吉川の口から、西田敏行の「産休先生」の話題が出てきたのには驚いてしまった。

                あれって多分、私が中学生ぐらいの時やってたんじゃないのかなぁ…相当昔のドラマだと思うんだけど、吉川先生若そうなのに、結構歳食ってたのかな?
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