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    『壊れゆくひと』島村洋子

    壊れゆくひと
    壊れゆくひと
    島村 洋子 1998/1/25文庫化 角川文庫 P.169
    ★★★★★
     いつからだろうか、「ひとは悪意を持って怒る」なんてことは絶対にないのではないか、と気がついた。
     みんな怒るのは「自分の善意を受け入れてもらえないとき」であって、すべては「よいこと」「よいひと」が原因で始まっているのではないか、と思う。
     起こってしまったことがどうであれ、発端は「善意」であるということに、私は興味を持っていた。                 〜『あとがき』より〜

    社員が10人程度、の小さな損保会社で事務をしていた28歳の「まりこ」。
    なかでも女子社員は事務の2人だけという環境で、3歳年上の地味な先輩を、ある日の些細な出来事から怒らせてしまったらしい「まりこ」は、理不尽ないじめに遭うことに…。

    勤めるということは時間を切り売りすることで、失礼のない程度に会社のみんなと付き合い、あわてて家に帰って、あとの時間は、親友や恋人と過ごせば良いのだと割り切り、面倒なことは「OFF」しておくことにしたものの、「まりこ」以外の社員からの評判はとても良いという彼女からの執拗ないやがらせに耐えかねて、会社を辞め、念願だった執筆業に専念することにした「まりこ」。

    そうやって「少しおかしな人」から逃れたはずの「まりこ」の元に、ある日を境にかかってくるようになった脅迫電話…。
    「まりこ」に恥をかかされたという一方的な思い込みから、電話をかけ続ける編集者の男。

    その頃「まりこ」が知り合い親しく付き合うようになった、自分は人気アイドルの彼女なのだと言い張る子持ちの女。

    姉の結婚式で一度会っただけなのに、「まりこ」と付き合っていると周囲に吹聴する男。

    そうして「すこし軸のずれた人たち」に囲まれ、おかしいのはそちらの人間なのか、それとも自分なのか、が「まりこ」自身、分からなくなってしまい……。

    「女は静かに狂い始める……。
    現実と虚構の狭間から滲み出す狂気を描いた戦慄のサイコ・ホラー」だ、そうで。


    近ごろ電車の中で、一人ブツブツ言ってる人が増えた、という話を今日も職場のみんなとしていたところで…、そういう人が側に近づいてきた時にどう対処すれば良いのか難しいなぁと(速攻離れてしまえば、相手の怒りをかってしまうかもしれないし、かといってじっとしているのも何かされそうで怖いしで)。

    で、この本の解説に「この本を読んでいくにつれ、自分が果たして正常な精神を持っているのかどうか、それさえもわからなくなる……そして、正常な精神とは、いったいどういうものなのかという、根本的な命題にぶちあたるのです。電車の中で、50人のうち49人がぶつぶつとひとり言を言うのなら、無言で本を読むたったひとりの人の方が異常であるかもしれない…」と、書いてあったので、タイムリーだなぁと(10年以上前の本なんだけど…)。

    確かに、多いもん勝ちというか…そういう世の中なのかなと。

    ここに出てくるごくごく普通の正常な精神状態の人達の「ずれ」は、明らかに「異常」な人よりも、見えないだけに怖くて…(「いい人に思われるために」他人に罪を転嫁して、みごとな嘘をつける人…というのは、結構身近にも多くいそうな)。

    そして最後まで読んで、誰がいったい「まとも」なのか、分からなくなって頭がこんがらがってしまった。

    「もしかしたら、私も…そっちなのかな?」と思わされてしまうし、精神的にじわじわと追い込まれてしまうような、そんなお話。

    に、しても島村さんの描く女性の心理は、自分の不可思議な行動をずばり言葉にしてくれるようで、それだけでも読んでいて小気味好いというか…。

    「たいして好きでない男だっていい日もある。
    女というのは誰だって、自己評価が下がっている日にはただ自己愛のためだけに、自分に興味を持ってくれる男に会いにいく日もあるのだから。」

    でも、そんなことしてると「ドツボ」にはまってしまうんだけど…(私の場合)。
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      『色ざんげ』島村洋子

      色ざんげ
      色ざんげ
      島村 洋子 2005/3/25 文庫化 中公文庫 P.258 ¥720
      ★★★★
      好きだから自分のものにする、その手段なんか選んでいる余裕がありません。好きなものを自分のものにしたのに、色気違いよばわりされるのには、抗議をします。誰にもこんな気持ちはあるんじゃないかと思います。燃えるような恋心を世間や相手の都合で、自ら消すことができるのだったらば、それは恋でもなんでもありません。本当に生命を懸けて惚れれば、どんなことでも平気でできます。

      1936年(昭和11年)5月18日、東京荒川区の連れ込み宿の一室で発見された、陰茎を切り取られた男の絞殺死体。

      布団の敷布には鮮血で書かれた「定吉二人キリ」の文字。
      そして、死んだ男の太ももや腕にも「定」の文字が切りつけられていたという、猟奇殺人事件「阿部定事件」は、世間に異常な興奮をもたらし、三日後に逮捕された「阿部定」の名は、稀代の毒婦として後世まで語り継がれることに…。

      神田で一、二を争う、裕福な畳屋の末っ子として生まれ、甘やかされて育ったものの、そのあまりの放蕩ぶりがたたり、父親から見放され、芸者として預けられ、後に女衒に売り飛ばされ、男を渡り歩くことになった「定」の「女」としての生涯を関係した男たちの視点から描く、

      『一九四七年・秋――山元某』、『一九二〇年・春――慶大医学生』、『一九二一年・梅雨――稲葉正武』、『一九三六年・春――板前某』、『一九三六年・初夏――大宮先生』、『一九四一年・春――稲葉正武』、『一九四六年・冬――天ぷら屋某、織田作之助』、『一九六八年・春――進一』

      そして、阿部定本人のインタビュー形式の『二〇〇一年・春――阿部 定』から成る、連作短編小説集。

      「その女の名は、阿部定。彼女との奔放な情交に耽溺し、何がしか人生を狂わされた男たちが、嘘かまことか、定の記憶を語る。女性作家が虚と実の間に描く幻想のエロティシズム。」だ、そうで。


      大島渚監督の『愛のコリーダ』をめぐる上映禁止事件?というのが何故か子供心にものすごく印象に残っていて、「阿部定事件」には結構昔から惹かれるものがあって…。

      そして大人になった私は、これを読んで「定」のその時の気持ちが理解できるようになってしまったかな。

      「あたしは今、安心しているんですよ。あの人がいないから安心しているんです」という「定」の言葉は、一度は恋に狂ったことがある女性ならきっと理解できそうな。

      ここに語られる「定」と関係を持った男たちが、誰一人として「定」を悪く思ってないのが、「定」という女性の全てを物語っていて、「どうせ自分は殺されるほど定に愛されてはいなかった…」と、殺された石田を少々羨み、残念がる男の惨めな呟きに、こんな風に男に思わせた「定」を羨ましく思える。

      男としても、そういうの案外「本望」なのかもな、とも。

      娘時代からの「定」を知る男の、「真面目すぎるほど真面目なゆえに逆におかしくなってしまった女なのではないか」という台詞にもうなづけるし、これまで誰にも執着しなかった「理性の強い女」が「初めて本気で好きになった男、石田に出会って、綺麗な身体で、最初からやり直したかったのではないか」というのは、涙が出るほど良くわかる。

      そうまで恋しく思える相手に巡り会えるというのは、幸せなのか、不幸なのか。
      男と女は難しい…。

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        『ココデナイドコカ』島村洋子

        ココデナイドコカ
        ココデナイドコカ
        島村 洋子 2006年 祥伝社文庫 P.278
        ★★★★
        「好きだった」といっても本当に「好きだった」かどうかは自分でもあやしい。
        何年も何年も好きな人がいなかったからといって、誰でもよかったわけではないけれど、なんとなく好きになれそうな人が欲しかったのだ。
        つまらない日常の励みとして。

        妹がさっさと家を出て行ってからは、厳しい母と、二人で暮らしていた「私」。
        ふとしたきっかけから、何度かデートを重ねるようになった「西」と名乗る男。
        「繊維会社」に勤める彼には、売上げのノルマがあり、今月はあと少し足りないのだと、さり気なくいう。
        妹の結婚式用の着物を誂えてもいいかなと考えていたところなので、どうせなら彼のところでと、ローンを組んで、一通り揃えることにしたのだが、その日を境に、彼からの連絡が来なくなり…『密閉容器』

        同じカルチャースクールに通う、二人の女性の話。
        なかなか子供ができない夫婦と、子供ができてしまった不倫中の女…『むらさき』。

        突然妻に出て行かれた家族の話。
        土日にはどうしても「母親」が必要となる一家の主は、愛人に「母親」の代役を頼むことにした…『偽妻』

        他『代用品』『事情通』『当て馬』『嘘恋人』『数字屋』『幸福』の9編から成る短編集。

        「現代女性の心理の深奥にせつなく迫る、恋愛小説。
        恋愛小説ファン、必読! 注目の実力派作家が描く、せつない恋の物語」
        だ、そうな。


        「恋愛小説」にしては、全く甘くないというか…なかなか奥が深い。
        せつないと言えば、かなり、せつないけど。
        『密閉容器』に出てくる母と娘は、山本文緒の『群青の夜の羽毛布』の親子みたいな感じ。

        どの短編も、結末がすごく良かった。
        『事情通』、『当て馬』なんかは結末がなかなかブラックで、ぞっとした。
        女って、怖い…とつくづく思える。

        『幸福』の話はちょっと泣けてしまう。
        「綿々と続く血脈だけが、果たして幸福なのだろうか。」というの、すごく分かる気がした。

        電車に乗る前に、あわてて、本屋さんで表紙だけ見て買ったけど、結構「当たり」の本だったかも。
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